お姫様を奪取せよ! |
ソードマスターはやると言った事は必ず実行する。
それがどんな事であろうとも。
そして全ての事をやり遂げる。
必ず成功させるのだ。
まぁやっていい事といけない事の区別ぐらいはできるはずだが・・・
伝記『ソードマスター』より
求人の街センジェス。
世にいる無職の人達の楽園だ。
と言ってもセンジェスの街すべてが『求人の街』という姿をしているわけではない。
街の西部が求人街。
そして東部は王族領。
王族領には中心に城があり、そこに王族の人が住んでいる。
城の周りには貴族の家々が建ち並んでいる。
求人の情報はその王族領の貴族達が国内の町や村からの情報を受け、それを求人街で公表する。
それにより国への忠誠心を強める。
そして求人街では徴兵も行っている。
それなりの腕さえ持っていれば高い収入を得ることができる。
求人街きっての人気求人だ。
国としても無職者としても益がある。
それがセンジェスという街だ。
そんな街にジェイは仕事を求めてやってきていた。
「さぁどんどん見ていってくれ!いい求人ばかりだよ!!」
「この求人はうちだけにしかないよ!!」
求人売りの威勢の良い掛け声が聞こえる。
この求人街では求人情報を売っている。
求人情報を買えばその仕事は必ずやることができる。
そういうシステムなのだ。
ただし仕事先でクビにされるかされないかは別だが。
ジェイは求人街のメインストリートを歩いている。
右を見ても左を見ても求人売りでいっぱいだ。
そんなメインストリートの求人売りを見向きもせず、ジェイは求人売りの屋台と屋台の間にある狭い裏通りに向かう。
裏通りは真昼にもかかわらず建物の影で暗く、裏通りの裏通りにあるべき雰囲気を充分にかもし出している。
裏通りにはあのメインストリートが嘘のように人がいない。
その誰もいない裏通りをジェイはひた進む。
しばらく進むと目の前にレンガでできている立体交差が現れた。
その立体交差の影に日よけのフードをかぶった男がいる。
「仕事をくれ!」
ジェイはその男に向けて親しげに声をかけた。
「・・・・・」
「おい!聞いてるのか!?」
「・・・あぁ、お前か」
フードの男は久々の来客を歓迎するわけでもなく、また非難するわけでもなく、ただありきたりの返答で迎えた。
ただジェイとは面識があるようだ。
「・・・希望は?」
フードの男はジェイに希望の求人情報を聞く。
求人売りとしての第一声だ。
「聞くなよ!・・・いつも通りだ」
「高収入で低価格な求人・・・か」
「わかってるじゃないか」
ジェイは満足そうに頷きながら答えた。
ジェイのいつもの希望求人だ。
「で・・・あるか?」
「・・・お前向きの求人は・・・こいつだな」
そう言うとフードの男は木製の重箱型のケースから一枚の用紙を取り出した。
用紙には仕事内用、収入金額、依頼人の顔写真などがある。
ジェイはさっそくその用紙を見まわす。
「・・・その求人の価格は1500ブラン・デューンだ」
ブラン・デューンとはこの国、ブランの通貨単位だ。
1500ブラン・デューンの価値は・・・というと説明しにくいが、例を言うと、
子供用に売られている菓子がだいたい10〜200ブラン・デューン、ティーンを対象にした文学書物がだいたい400〜800ブラン・デューン、よく出回っているありきたりなショートソードがだいたい4000ブラン・デューンだ。
この1500ブラン・デューンとは求人としては安すぎる価格だった。
普通求人というのは安くても5000ブラン・デューン、高いものでは20000〜30000ブラン・デューンするものもあるくらいだ。
「安すぎねぇか?」
ジェイは視線を用紙からフードの男に移し、疑問を投げかけた。
「・・・それくらい危険な仕事だ。内用をよく見ろ」
フードの男に言われ、ジェイは再び用紙に目を通す。
依頼人は若い新人兵士、収入金額は成功報酬で100000000ブラン・デューン・・・
「100000000ブラン・デューン!!!」
ジェイはそこまで読んだところで思わず叫んだ。
100000000ブラン・デューンといえば家が一件余裕で変える金額だ。
こんな高収入の求人はめったに・・・いや、まずありえない。
しかし実際にここにその求人がある。
ジェイは改めて用紙の続きを見る。
仕事内用・・・城からお姫様を奪取する。姫様は・・・
「お姫様を奪取!?」
ジェイは再び叫んだ。
しかし今度は声を張り上げた叫びではなく、小さな叫びだ。
その内用の濃さが声を張り上げるのを制したのだろう。
・・・姫様は城の両端に聳え立つ塔、そのうちの西に聳え立つほうの塔の最上階にある部屋におられる。塔内は螺旋階段が続いており、その長さは半端ではない。その途中途中にはいくつかの部屋があり、そこに衛兵が待機している。姫様の衛兵だ、相当の腕があると思われる。塔の入り口の鍵は普段閉められていて入ることが出来ないが、私が進入実行日に入り口の扉を開いておく。よって実行日は定めさせてもらう。ヘルネス月225日深夜2時、この時間に実行してもらう。これは並大抵の仕事ではない。それはこの内容を読んでくれればわかるだろう。しかしそれに見合った報酬金額であるはずだ。腕の立つものを望む。最後に、これはほかならぬ姫様が望んでいることだ。必ず成功させてほしい。
そこで仕事内用の欄は終了していた。
「・・・おい、これは」
ジェイは思わずフードの男に、問うこともなく問う。
「・・・かわないならそれでいい、他の客に売る。・・・まぁお前以外にこの仕事をこなせるものがいるとは思えんがな」
フードの男はジェイの腕を・・・ジェイの正体を知っていた。
だからこそこの求人用紙を見せたのだ。
ジェイはしばらく考え込み、そして、
「・・・いいだろう、この求人買った!」
ジェイは500ブラン・デューン硬貨と1000ブラン・デューン紙幣をフードの男に差し出し言った。
「・・・わかった、ではその旨を依頼人に伝えに行く。お前は実行に備えて準備でもしていろ」
そう言うとフードの男はそそくさと裏通りを進んでいった。
ジェイは用紙を手に、来た道を戻っていった。
その日はヘルネス月224日、ヘルネス月225日は明日だったのだ。
求人街にある宿屋『フォーチュン・デイ』。
その宿屋の一室にジェイはいた。
壁際にセットされたベッドの上に座り、壁によりかかり、その壁にある窓から外の様子をうかがう。
外は真っ暗。
空にはくっきりと三日月が浮かんでいる。
快晴の夜空だった。
時刻は深夜1時、そろそろ出発する時刻だ。
ジェイは愛用の長剣を持つとベッドを降り、個室を出た。
目指すはお城・・・王族領にあるブラン城だ。
ジェイは王族領の街道を走る。
立派な建物が並ぶ王族領は街道も整備されている。
石が均等に敷き詰められ、その色もカラフルだ。
しかしジェイにそのカラフルな石を見ている暇はない。
ジェイは一直線にブラン城へと向かう。
ブラン城に辿り着くまでにジェイは誰にも会うことがなかった。
ブラン城の門には門番が二人いる。
しかし二人とも意識は夢の方へ行っているようだ。
ジェイは二人のみぞおちを思いっきり殴った。
「うっ!!」
二人の門番はうめき声と共にその場に崩れおちた。
「ちょっと失敬」
ジェイはそう言いながら門番の兵装を奪い取り、それを着込んだ。
傍から見ればジェイは完全なブラン兵士だ。
そしてジェイは正門から堂々とブラン城の敷地内に侵入したのである。
ジェイはブラン城の敷地内に侵入すると、一目散に西に聳え立つ塔へと向かう。
正門を入り、左の道を進む。
道は、この地域では珍しい針葉樹の並木道になっていて、その先に聳え立つ塔が見える。
塔の扉の前には衛兵がいない。
依頼人が上手く考慮してくれたのだろう。
ジェイは扉をゆっくりと開ける。
扉はあっさりと開いた。
これも依頼人によるものだろう。
ジェイはさっそく現れた螺旋階段をゆっくりと上り始めた。
ひたすら右回りに続いている螺旋階段。
その螺旋階段はある塔を思い出させる。
「またかよ」
ジェイは内心そう思った。
しばらく進むと螺旋階段の途中に一つの扉があり、その扉の前には衛兵が一人立っている。
「おい!門番が何をやっている!!」
衛兵がジェイに向かって話しかけてきた。
どうやら門番には門番用の兵装があるみたいだ。
ジェイはゆっくりと衛兵に近づく。
そして・・・
「落ちてろ」
そう言うとジェイは長剣の柄で衛兵のみぞおちをおもいっきり突いた。
「うっ!!」
衛兵は門番と同じようにうめき声と共にその場に崩れ落ちた。
ジェイは衛兵を担ぎ、扉を開けた。
扉の先にはいくつかの2段ベッドがあり、何人かの衛兵が睡眠をとっていた。
誰も起きていない。
「大変です!何者かがこの衛兵どのに攻撃を加え、逃走しました!!」
ジェイは声を張り上げて叫んだ。
寝ていた衛兵は全員起き、その視線がジェイに向けられる。
「何だと!!」
寝ていた衛兵達は担ぎこまれた衛兵を見て、その事実をはじめて認識した。
衛兵達がベッドから降り、ジェイに問う。
「そいつはどこに逃走したんだ!?」
「階段を下へと逃げていきました!この衛兵どのは私が見ます。皆さんは逃走した輩を追ってください!!」
「よし!わかった!皆!行くぞ!!」
衛兵達は威勢良く階段を下へと降りていった。
上の方からも声が聞こえる。
そして階段を降りている音が聞こえる。
どうやら上にいる衛兵もジェイの声を聞いて、架空の『輩』を追いに行ったのだろう。
ジェイは担いでいた衛兵をその場に下ろし、部屋を出て更に階段を上り始めた。
階段を駆け上がる。
足が上下に激しく動く。
絶え間ない運動。
絶え間ない感覚。
そして絶え間ない激しい鼓動。
そのすべてにジェイは慣れていた。
つい最近同じような経験をしたから、ということもあるが、ジェイの基礎的な運動能力が普通の人間を凌駕している、ということがその理由だろう。
それでも絶え間なく続く階段。
いいかげん嫌気がさすというものだ。
「ったく!螺旋階段の塔にろくな塔はないな!!」
ジェイの憤りも最もである。
タッタッタッタッ
「うっせぇなぁ!」
ジェイは更に憤る。
石の階段とジェイの靴が接触し発生する音がやけに大きく聞こえ、ジェイの耳にうるさく響くからだ。
更に、
カチャカチャカチャカチャ
「うっせぇ!!」
ジェイが着ている兵装のすれる音が響く。
・・・憤らずにはいられない。
この空間すべてがジェイを憤らせているようだ。
そんなさまざまな憤りの中、ジェイはようやく最終点へと辿り着いた。
ひときわ重厚な扉。
重く冷たい黒い金属製の扉は、訪れるものを拒むかのようにそこに存在した。
ジェイはその扉に手をかけ、そして扉を・・・
扉を開くことは出来なかった。
鍵がかかっていたのである。
扉と同じく重厚な錠がジェイを嘲笑うかのように行く手を阻む。
「ったくこの塔はどれだけ俺を怒らせれば気が済むんだよ!!」
ジェイはそう言いながら数歩その場から下がり、腰に携えられている長剣に手をかける。
そしてそのまま身体をかがめた態勢になる。
いわゆる『抜刀』の構えだ。
まぁそんな言葉をジェイが知っているわけ無いが。
『抜刀』の構えをしたジェイは、迷うことなく長剣を扉・・・錠に向けて抜いた。
キィーン
金属と金属がぶつかる音が甲高く響く。
しかし・・・
「・・・さすがに無理か」
長剣で錠を切り落とすことは出来ず、一本の線が描かれただけだった。
当たり前である。
しばらくの沈黙・・・
ジェイは考え込む。
そして、
「しかたない・・・使うか」
ジェイはつぶやくと、長剣を地面と水平に真正面に向けた。
剣先は錠に向けられている。
そしてジェイが目をつぶり、意識を集中させる。
すると、
ブゥゥンブゥゥンブゥゥンブゥゥン
長剣が銀色に発光し、力が込められる。
ジェイはその銀色に発光する長剣を錠に向けて突き出した。
錠と長剣が接する。
すると、あたりがまばゆいばかりの銀閃光に包まれた。
光りで視界が閉ざされる。
ジェイは長剣を鞘に戻した。
銀閃光が徐々に弱まる。
そこに錠は存在しなかった。
はずされたのでも砕かれたのでもなく、完全に消滅させられたのだ。
秘剣技『必滅突』だ。
『必滅突』は物体を完全に消滅させる剣技。
全世界に使えるものがジェイを含めて3人しかいないという秘技だ。
『必滅突』はその対象の力に比例してかなりの体力を消耗する。
あまりに強力なものに対しては『必滅突』は成功しない。
無駄に体力を消耗するだけだ。
ジェイが成功したのは錠の力がジェイのそれより低かったからだ。
「はぁはぁはぁはぁ」
ただ、ジェイの体力の消耗も著しい。
全身で息をしている。
そんな状況でジェイは支えを失った重厚な扉を開いた。
それがジェイの犯した失態だった。
扉の向こうは別世界。
全体がピンクな部屋。
床も、壁も、化粧台も、すべてがピンク。
そして左奥にある大きなベッド・・・いわゆる『お姫様ベッド』もピンク色。
そのベッドの上にお姫様はいた。
ピンクのロングヘアーに、ピンクの瞳、更にはピンクのドレス。
その顔は色白で美しい、お姫様そのものだった。
だが表情は暗かった・・・しかし、
「おっそいわねぇ!あなたが私を奪取しに来た人でしょ!もうちょっと早く来てよね!!」
お姫様はいきすぎなくらい明るかった。
そして口が悪かった。
「・・・・・・・・・・」
「私をこんなに待たせるなんていい度胸ね!!」
ブチッ
何かが切れる音がした。
「うっせぇ!こっちはわざわざ来てやってるんだ!いちいち文句を言うんじゃねぇ!!」
ジェイがキレた。
「あら!それじゃあ報酬はいらないのかしら?」
お姫様の挑発攻撃。さらに・・・
「それにあなたの正体をばらしてもいいのよ、ソードマスターさん♪」
「何でそれを知っている!!・・・求人屋か!!」
求人屋とはあのフードの男のことである。
ジェイはフードの男のことを親しみと憎しみを持って求人屋と呼んでいる。
どうやらその求人屋が依頼人にソーダマスターのことを話し、それがお姫様に伝わったらしいのだ。
「ったく求人屋のやつ!余計なことしやがって!!」
ジェイは悪態をつく。
その時、
「急げっ!姫様の元へ急ぐのだ!!」
「侵入者を捕らえろ!!」
「姫様をお守りするのだ!!」
下のほうからさまざまな、しかし同じ意図の大きな声が聞こえてきた。
どうやら気づかれたようだ。
「チッ!気づかれたか!!」
「まったく!あなたが叫んだりしたから気づかれたんじゃないの!?」
「ったくつくづく口の悪い女だな!」
ジェイはそういいながらベッドのそばに近づき、お姫様を担いだ。いわゆる『お姫様抱っこ』で。
「きゃっ!何するのよ!!」
「・・・俺の仕事はお前をこの城から奪取することだ。お前だってここから出たいんだろ?」
ジェイは自分でも知らぬうちに笑顔で答えた。
「そ、そうだったわね」
お姫様は頬を赤らめながら苦し紛れに声を出す。
「よしっ!行くぞ!!」
ジェイはそう言うと部屋を出た。
お姫様の顔は実に楽しそうなものになっていた。
「うおぉぉぉ!!!」
衛兵の叫び声が塔内に響き渡り、戦闘の合図となる。
といっても、ジェイはお姫様を担いだ状態。攻撃など出来るはずが無い。
しかし、それが最大の防具でもある。
ジェイはお姫様を衛兵達の剣先へ向ける。
「ひ、姫様!!」
こうなれば衛兵達はうかつに攻撃は出来ない。
「ちょ、ちょっと!危ないじゃないの!!」
はたして姫様のこの言葉はいったい誰に向けて言っている言葉なのだろうか。
兎にも角にもジェイはお姫様という最強の防具を装備し、塔の階段を下りきったのだった。
塔を出たジェイとお姫様が最初に見たものは、何人もの気絶しているブラン兵と騎馬に乗っている一人の兵士だった。
水色のショートヘアーで顔はジェイに劣らず美形だ。
「姫様!お怪我はありませんか!?」
騎馬に乗った兵士は騎馬から降り、お姫様にやさしく声をかけた。
「ディラン!!ディランこそ怪我は無いか!?」
お姫様は騎馬に乗った男・・・ディランに心から嬉しそうに声をかける。
お姫様の瞳からは涙が零れ落ちそうになっていた。
「姫様・・・もったいないお言葉です」
ディランは方膝を地につけ、深深と頭を下げた。
「おい、ところで報酬はいつもらえるんだ?」
ジェイはお姫様を降ろすと依頼人の男・・・ディランに問う。
「あぁ、すまない。ソードマスターどの。報酬は城から脱出し、一段落してから支払う」
ディランは頭を上げ、ジェイに答えた。
方膝はついたままだ。
ジェイへの感謝の気持ちも込められているのだろう。
「ところでディラン、こいつは本当にあのソードマスターなのか?」
お姫様は急にジェイを指差し、ディランに心に潜めておいた疑問を投げかけた。
さすがにお姫様でも本人に向かって言うことではないと、心に潜めたままにしておいたのだ。
「どういうことですか?」
ディランは不思議そうな顔でお姫様に問い返す。
「私はまだこいつの腕を見たことが無い。しかも今までこいつは私を盾に衛兵から逃げていたのだぞ!たまたま衛兵達は階段を転げ落ちて皆気絶したが・・・やはりこいつがソードマスターだということはにわかに信じがたい」
「姫様を盾に!?いくらなんでもそれはひどいではないか!ソードマスターどの!!」
ディランの怒りがこもった言葉をすべて聞き終わる前にジェイは動き出していた。
「危ない!ディラン!!」
お姫様の悲痛な叫び声が響き、ディランが後ろを振り向いた。
そこにはいつ現れたのか、鋭い槍を持った兵士がディランに襲いかかろうとしていた。
しかし、
「ぐぁぁ!!」
槍を持った兵士は叫び声と共に崩れ落ちる。ジェイの剣が、兵士の攻撃がディランに届く前に兵士の喉を捕らえた・・・のだろう。
ジェイの動きは・・・見えなかった。
普通の人間ではもちろん、並みの剣士でも捕らえることが出来ない動き。腕の立つ剣士でもジェイの動きを確認するのが限界で、剣の動きを確認することは出来ないだろう。
ジェイの攻撃を受けた兵士は首から上を失うことなく、また、血を一滴も流すことなく倒れている。
ジェイは兵士に刃を向けてはいなかった。
柄の部分で喉を突いていたのだ。
ジェイは剣を戻しながら、
「・・・これで信じてもらえるか?」
「さすがはソーダマスターどの、恐れ入った。そしてありがとう」
「・・・・・・・・・・」
「ん?どうなさいました、姫様?」
お姫様は無言でただジェイを見つめている。
「・・・何だよ?」
ジェイはお姫様の不可解な行動に戸惑いを感じ、おもわず問いかけた。
「・・・す」
「ん?」
「・・・す、すごい!!これがソードマスターの実力なのね!!」
お姫様は急に目を輝かせ、ジェイの手を両手で握ってはしゃぎ出した。
「お、おい!そんなにはしゃぐんじゃない!は、恥ずかしいじゃねぇか!!」
今のお姫様とジェイは、傍から見るとまるでダンスの苦手な人が無理をしてダンスを踊っているように見える。
ジェイもそんな光景を想像して恥ずかしがっているのだろう。
「いたぞ〜!!あそこだ〜!!」
突然、東の塔の方向からたくさんの騎兵が押し寄せてきた。
その数は有に30を越える。
ジェイは自分とお姫様の動きを無理矢理止めて、
「・・・きやがったか」
「なっ!あれはリデアの第三騎兵部隊!!あいつらはレインティットに出かけているお父様の護衛をしてるんじゃなかったの!?」
金髪のロングヘアーで、紫色の瞳をもつ、細く長い・・・まるで槍のような体付きをしていて狂槍のリデアと呼ばれている、リデア=オーヴァが率いる第三騎兵部隊。第三騎兵部隊は戦に参戦すると必ず敵を皆殺しにする。部隊に負傷者が出ても無視をし、ひたすらに敵を討つとても冷酷な部隊。
しかし必ず勝利という2文字を土産に戻ってくる強部隊であり、狂部隊である。
「チッ!こんなときに厄介な奴らが現れましたね!!」
ディランは苦悩の表情を浮かべる。
「おい!ディラン・・・だったよな!お前はこいつを乗せてとっとと城から出ろ!!」
ジェイはディランに向けて言い、お姫様をディランの騎馬に乗せた。
「わかった!・・・しかし、ソードマスターどのはどうするのですか!?あの騎馬兵全員を相手にするのはさすがにソードマスターどのでも不可能に近いと思います!!」
ディランの心配は当然だった。
ジェイの長剣に対し、騎兵部隊の槍はリーチが長い。さらに腕の立つつわものばかりの騎兵部隊、長期戦になればジェイに勝ち目はないだろう。
更に、もし脱出を試みようとしても人間の足と馬の脚、どちらの方が速いかは一目瞭然である。
しかしジェイは、
「・・・大丈夫だ。人の心配をする前に自分の心配をしろ。城を脱出したら求人街の宿『フォーチュン・デイ』で落ち合おう。さすがに求人街にまで追ってきて民衆に混乱を招くようなことはしないだろう」
平然とその場に構え、ディランに再会場所を指定した。
「・・・しかし」
「・・・信じてくれ、金を貰わぬうちにやられたりはしない」
「・・・わかりました」
ディランはそう言うと馬を走らせた。
お姫様が何か叫んでいたように見えたがジェイには聞こえなかった。
「くらえっ!!」
「覚悟っ!!」
「死ねっ!!」
容赦のない騎兵部隊の三方からの攻撃をジェイは素早くかわす。
さすがにそう簡単に攻撃を受けるジェイではない。
しかし、ジェイが劣勢に立たされているのは明らかだった。
騎兵部隊の攻撃が絶え間なく続く。
ジェイはただひたすらその攻撃を回避し続けていた。
しかし、
「・・・もらうぞ!!」
ジェイはそう言うと突然跳び上がり、騎馬に乗っている兵士に斬りかかった。
騎馬に乗った兵士はその剣をもろに受け、騎馬から落ちる。
しかし、どうやら兵士は厚い鎧に守られ怪我はないようだ。
ジェイは素早く兵士が乗っていた騎馬に乗り、城の入り口へと退避し始めた。
第三騎兵部隊の面々は一瞬あっけに取られてその場に立ち尽くしていた。
「お、追え〜!!」
リデアの声で我に返った騎兵達が一斉にジェイの後を追い始める。
しかしジェイはすでに城の入り口から城外へ脱出していた。
第三騎兵部隊はその場に立ち尽くす。
結成されてから初の失態であった。
ジェイの騎馬は王族領をひた走る。
深夜の王族領。
ともっている明かりは少なく、いわゆる市街地の夜景そのものだった。
しばらくすると、ジェイの目に明るいたくさんの灯火が見え始める。
求人街だ。
求人街は王族領と違って夜もにぎやか、いや、むしろ夜の方がにぎわいが激しいかもしれない。
徐々に求人街に近づいていく。
ジェイは近くの並木の横に馬を寄せ、降りて木に馬を括りつけた。
騎馬に乗って求人街内に入ることは人ごみのせいで不可能だからだ。
ジェイは馬から降りると珍しく慌てた様子で求人街に向けて走り出した。
なぜ?
それは求人街の一角に、やけに人だかりの激しい場所を見つけたからだ。
しかもよりによってそこは、宿『フォーチュン・デイ』の目の前だった。
(しまった!ディランのやつあいつをあのままの格好で宿まで連れてったのか!?)
ジェイは内心後悔した。
もっと的確に指示していれば良かったと。
しかし後悔してもしかたがない。
ジェイは全速力で『フォーチュン・デイ』へと向かった。
「はい皆さん!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!この一着のドレス!これはあの美しい美貌で有名なリーチェ=ブラン姫様が着ていたドレスだ!!他じゃ絶対に手に入らないこのドレス!今日はここでオークションにかけます!!なんと10000ブラン・デューンからのスタートです!!」
ジェイが宿の前で見たのは一人のありきたりな旅人が良く着るたぐいの服を着ている女と一着のドレスだった。
そのドレスは紛れもなくあのお姫様が着ていたドレス。
しかもそのドレスを売っている女はなんとあのお姫様だったのだ。
それにしてもお姫様が着るようなドレスが10000ブラン・デューンから・・・人だかりが出来て当たり前だ。
たとえお姫様が着ていたものではないとしても、普通は安くてももう一桁上くらいの値段からスタートするだろう。
ジェイは何故か自分のドレスを売っているお姫様・・・リーチェをその鋭い眼光で睨みつけた。
リーチェはしばらくジェイの存在に気づかなかったが、ジェイの鋭い眼光の威圧感を感じ取り、ジェイの存在に気づいた。
「さぁ!それではオークション開始です!10000ブラン・デューン!!」
「12000ブラン・デューン!」
「14000ブラン・デューン!」
「20000ブラン・デューン!!」
リーチェのオークション開始の掛け声と共に、民衆の叫び声がこの『フォーチュン・デイ』の前の空間を支配し始めた。
「25000ブラン・デューン!」
「28000ブラン・デューン!」
民衆の叫び声はしばらく止みそうにない。
ジェイはその隙にリーチェの元へと移動した。
「・・・何やってんだよ!」
ジェイの小さくても重い叫び声がリーチェの元に届けられる。
その言葉にはいろんな意味が込められているだろう。
「・・・お金稼ぎ」
「あぁ!?一国のお姫様がオークションで金稼ぎだと?」
ジェイの声は先ほどより明らかに大きくなっていた。
しかし民衆の騒ぎ様はすでに尋常のものではなくなっており、ジェイの声などまったく耳には入ってなかった。
「・・・でも、お金はお城の中だし、お金を手に入れないとあなたに報酬金をあげられなくなっちゃうし」
「・・・は?」
「だから!あなたの報酬金が今のままじゃ払えないの!!」
「なんだとぉ!!!」
「うるさい!!!!!」
ジェイの叫び声に対し、民衆はこの4文字の言葉で応戦し、圧倒的な力で勝利した。
「す、すいません」
ジェイは思わず謝ってしまった。
ただジェイが謝ったときには民衆は再びドレスのオークションに夢中になっていたが。
「・・・と、とにかく話は宿の中でするぞ!!」
ジェイはそう言うと無理矢理リーチェを連れ、宿の中へと入っていった。
ドレスのオークションは白熱する一方だった。
ドンドンドンドン
ジェイは宿の階段を怒りを押し付けるかのように一段一段上っていく。
リーチェはジェイに半ば無理矢理引っ張られている。
階段を上りきったジェイは、ディランがいる部屋の前まできた。
ジェイはその部屋の扉を勢い良く開ける。
「おい!ディラン!これはどういうことだ!!お姫様の面倒ぐらいちゃんと見ておけよ!!」
・・・・・・・・・・
ジェイの声に答えることができるものは一人もいなかった。
ディランは部屋の中にあるベッドの上で倒れていたのだ。
「おい!大丈夫か!?」
ジェイがベッドのそばに駆け寄る。
見るとディランの頭に大きい・・・と言うよりでっかいたんこぶが出来あがっていた。
完全に気絶している。
「・・・いったい誰がこんなことを、俺の目が節穴じゃなければディランはなかなかの使い手なはず、そのディランに一撃を食らわせるとは・・・アサッシン・・・暗殺者か?」
ジェイの頭の中でいろいろな可能性がよぎる。
「・・・ごめん、ディランを気絶させたのは・・・あたし」
ジェイに引っ張られて体がボロボロになっているリーチェが言った。
「お前が!?」
ジェイは半信半疑な様子でリーチェの顔を凝視する。
「・・・私がこのドレスをオークションにかけてお金にするって言ったら、ディランが『行けません姫様!』って言って全然オークションさせてくれなかったの。だから私が宿の廊下にあったモップでディランの頭を思いっきり叩いちゃったの。そしたらディランが気絶しちゃったのよ」
リーチェはさらりと言ってのけた。
「『気絶しちゃったのよ』じゃねぇよ!それに報酬金が払えねぇだぁ?冗談じゃねぇぞ!!」
「・・・しかし・・・依頼用紙を・・・見てもらっているならば・・・まだ報酬を払う時ではないことが・・・わかるはずですが」
「ディラン!」
いつのまにか気を取り戻していたディランがジェイに向かって言った。
リーチェは安堵の顔でディランを見ている。
「・・・『依頼用紙を見てもらっているなら』だと?」
ジェイは念のため携帯していた依頼用紙を見直してみた。
以前読んだ内用と同じ依頼内用が書かれている。
しかし、
「・・・何だって!!」
ジェイが急に叫んだ。
ジェイは再び読み返してみる。
*城からお姫様を奪取する。姫様は城の両端に聳え立つ塔、そのうちの西に聳え立つほうの塔の最上階にある部屋におられる。塔内は螺旋階段が続いており、その長さは半端ではない。その途中途中にはいくつかの部屋があり、そこに衛兵が待機している。姫様の衛兵だ、相当の腕があると思われる。塔の入り口の鍵は普段閉められていて入ることが出来ないが、私が進入実行日に入り口の扉を開いておく。よって実行日は定めさせてもらう。ヘルネス月225日深夜2時、この時間に実行してもらう。これは並大抵の仕事ではない。それはこの内容を読んでくれればわかるだろう。しかしそれに見合った報酬金額であるはずだ。腕の立つものを望む。最後に、これはほかならぬ姫様が望んでいることだ。必ず成功させてほしい。
依頼内用はここまでなはずだった。
しかしこの後に小さな文字で続きが書かれていたのである。
*なお、姫様を奪取することに成功した場合、必ず報酬金は払うが、すぐに支払うことは出来ない。その代わりと言ってはなんだが、私が依頼を受けていただいた方のお供になる。その間、報酬金の金額をかき集め、必ず支払う。以上だ。
「・・・必ず支払う。以上だ」
ジェイは思わず依頼用紙の内用を音読してしまった。
それくらいジェイにとってはショッキングな内用だったのだ。
「そういうことだ。ソードマスターどの」
ディランが頭をさすりながらジェイを諭すように言った。
(求人屋のやろう!!)
ジェイは内心、求人屋に対して怒声を上げた。
依頼用紙は依頼人が直接書くものではなく、求人屋が依頼人から依頼内用を聞き、それを依頼用紙に書き写しているのだ。この小さな文字は、間違いなく求人屋の仕業なのである。
・・・ちなみに求人屋は老人だ。(この言葉の意図は、わかる人にしかわからない♪)
しかし今更ジェイにはどうでもいいことだった。
そんなことより、
「報酬金は必ず払うったって、いったいどれくらいかかるんだよ!半端な額じゃないじゃないか!!」
「・・・・・・・・・・」
ディランは返す言葉を見つけることが出来ずただ黙していた。
非常に辛そうな表情だ。
ディランはやっとの思いで次の言葉を発した。
「申し訳ない!もし私を旅に同行させて貰えるなら、何年かかってでも必ず報酬金は返す!しかし・・・それも叶わぬのならばこの身を滅ぼすことで無かったことにしてもらいたい!!」
ディランの表情は真剣そのもの。本気だ。
「ふざけるな!どうしてそんなに簡単に自分を捨てることが出来る!?お姫様さえ生きていればそれでいいのか!?自分の代わりにお姫様に生き続けてもらえればそれで本望なのか!?それが兵士ってものなのか!?」
ジェイの一言一言がディランの心に突き刺さる。
しかしディランも退かない。
「私は『お姫様のため』に自分を捨てるわけでは無い!これは自分自身が望んでやることなのだ!!けして生半可な気持ちで述べているのではない!!」
「だからといって、命はそう簡単に捨てるものでは無い!!」
「だが!私の命が尽きることで、姫様の未来が明るいものになるならば本望だ!」
「いいかげんにして!二人とも!!」
いつのまにか言い争う状態になっていた二人を制したのはリーチェだった。
「ディラン!私はあなたが命を捨てることで、明るい未来を手にいれることなんてできない!!」
「・・・・・・・・・・」
「ソードマスター・・・え〜っとジェイって名前だったっけ?あなたも言いすぎよ!ディランは私のためにいろいろ尽くしてくれているわ!さっきの言葉はたまたまちょっとその度がすぎただけよ!!」
「・・・・・・・・・・」
「報酬金は必ず支払うわ。ディランがあなたに付いて行く。そして、私も付いて行くわ!!」
「いけません!姫様!!」
リーチェの突然の発言に、ディランは血相を変えてリーチェに向かって叫ぶ。
「・・・何で?ディラン。あなたが本当に私に明るい未来を進んでほしいと願っているんだったら・・・一緒に行かせて」
リーチェの口調が急にやさしいものになる。
「姫様・・・」
ディランは困惑する。
無理も無いだろう。
「お前達は俺に報酬金を払う気はあるんだよな、だがすぐには支払うことが出来ない。で、ディランが俺のお供になって少しずつ報酬金を支払っていく。ディランはそう考えているんだよな?」
ジェイがディランに問いただす。
「えぇ、その通りです」
ディランは頷く。
「だったら一人で報酬金を稼ぐより、二人で稼いだ方が効率がいいんじゃないのか?なぁ、お姫さんよぉ」
「・・・そうよ!!」
リーチェの表情が見る見るうちに明るいものになった。
「しかし・・・」
しかしディランはまだ納得のいかない様子だ。
「それに、お姫様をこのまま自由の身にするよりは、俺と一緒にいたほうが間違い無く安全だと思うぞ」
ジェイは自身満万にそう言いきる。
「・・・そうですね。私もいることですし、確かに一緒にいたほうが安全かもしれません。ソードマスターどの!報酬金は必ず私と姫様が支払います!それまで旅のお供をさせてください!!」
ディランはジェイに向かって深深と頭を下げる。
「私からも頼む」
リーチェも頭を下げた。
「・・・い、今更『嫌だ!』なんて言えるわけ無いだろ!二人ともまとめて面倒見てやるから頭を上げろ!!」
ジェイは恥ずかしそうに二人の期待に答えた。
「ありがとうございます!」
「ありがとう」
それはディランとリーチェの下心など微塵も無い心からのお礼だった。
「ただし!ディランはお姫様のことを『姫様』と呼ばないようにすること!そして俺のことを『ソードマスター』と呼ばないこと!!リーチェは・・・あまりはしゃぎすぎないこと!!いいな!!!」
ジェイは条件をなるべく端的に述べた。
ディランとリーチェは無言で頷く。
「あと、リーチェ!お前何で城から出ようなんて・・・いや、何でもない」
ジェイは、リーチェに城を出ようとした理由を聞こうとしたがやめた。
ジェイは、いずれリーチェから話してくれるのを待った方がいいと思ったのだ。
「とにかく!報酬金がすぐに支払えないんだったら稼ぎに行くまでだ!出るぞ!!」
ジェイはそう言うと宿屋の部屋を出ていった。
その顔はほのかに赤く染まっていた・・・ように見えた。
「・・・行きましょう!ひめさ・・・リーチェ!!」
「ふふふ!そうね!行きましょ!!」
ディランとリーチェは互いに微笑みながらジェイの後に続いた。
階段を下り、宿屋を出ると、そこではまだドレスのオークションが続いていた。
「76000ブラン・デューン!!」
「80000ブラン・デューン!!」
・・・・・・・・・・
「誰もいませんか?」
リーチェがタイミング良く民衆達を促す。
「いませんね!それではこのドレスはあちらの男性が競り落とされました!おめでとうございます!!」
そういうとリーチェは男性の元へ行き、ドレスを渡す。
そして80000ブラン・デューンを受け取った。
民衆の人だかりは瞬く間になくなった。
「これで旅の資金は確保できたわね!!」
リーチェは片手を腰におき、得意げに言った。
「はぁ、やはりオークションに出してしまわれたのですね、ひめさ・・・リーチェ」
ディランはまだ『姫様』が抜けていないようだ。
「よし!とにかく旅の資金も手に入った!さっそく旅に出るぞ!!」
ジェイは高らかに旅再会を宣言した。
「で、どこに向かう気?」
リーチェは問う。
「目的地?・・・ふっ!そんなもんはないさ!!」
ジェイはそう言うとどこに続いているのかまったくわからない道を進み始めた。
「待ってください!ソードマ・・・ジェイどの!!」
「待ってよ〜!ジェイ〜!!」
ディランは慣れない口調で、リーチェは相変わらずお気楽な口調でジェイに向かって叫びながら、のびのびと、自由に走り始めた。
この先、いったいどんな出来事が起こるのだろうか?
そんな気持ちを胸に秘めて・・・
「リーチェ、そう言えばその旅人用の服はどうしたんだ?」
ジェイが不意にリーチェに聞いた。
何気に気になっていたのである。
「あっ、これ?これ宿屋にあったのを貰ってきちゃった♪」
リーチェは楽しそうに答える。
「・・・お前盗賊にでもなるか?」
ジェイは冗談混じりに言った。
結構いい線までいったりして・・・なんてことを思いながら。
ソードマスターはやっていい事といけない事の区別はきちんとつける。
当たり前のことのように聞こえるかもしれないが、それがなかなか難しい。
ソードマスターは言葉だけではやってはいけない事のように聞こえることでも、それがやっていい事ならば迷わず実行する。
その判別能力はソードマスターの一つの力なのかもしれない。
The
end of this story is not yet.....