CLOSE YOUR EYES(remix) |
学園祭。
学生のいろいろな思い…
『自分の表現を披露する』
『授業をやらなくて済む』
『わいわい楽しめる』
『めんどくさい』
このような様々な思いが渦巻く祭典。
その祭典を僕は14年間の人生の中で一番、決意の思いを抱いて迎えていた…
……多分。
僕は今、屋上への階段を上っている。
屋上に…君がいることを信じて。
大好きな…君が………
僕は内気だった。
家では家族ともあまり話さない。
学校では友達もいない。
人とは用件だけを交換する。
それだけだった。
そんな僕は、君と会ってから変わった…
君は夏休みあけ早々に転入してきた。
「……です!これからよろしくお願いします!!」
背が高い君。
ショートカットの髪の毛をした君。
パッチリした目の君。
元気のいい君。
それが僕の最初のイメージだった…
外見の。
「よし、じゃあとりあえずあそこの席に座ってください」
…僕の隣の席だった。
君はゆっくりと歩いてきて隣の席に座った。
そこで君は、
「これからよろしくね♪」
君は片目を、CLOSE
YOUR
EYES
学園祭の準備。
うちのクラスは病院喫茶って言うのをやるらしい。
椅子、テーブルはなく、病院のベッドに寝て、そこで食事をする。
店員は医者や、看護婦の姿になるらしい。
いったいどっからそんな発想が出てくるんだか。
まぁどうでもいいけど。
僕はいつのまにか衣装を調達する係りになっていた。
……そして君も。
それは学園祭の準備が行われた日の二日前。
その日、クラスではクラス会議が行われた。
病院喫茶の各係りを決めるためだ。
僕はもちろん会議になんか参加しなかった。
一応教室にはいたけど、ずっと自分の机で寝ていた。
まぁいつものことだ。
目を覚ましたときにはほとんどの係りが決まっていた。
もちろん僕の係りも決まっていた。
…まぁいつものことだ。
決まっていない係りはあと二つだった。
『衣装調達』のもう一人と、『大道具調達』のあと一人。
各係りとも二人必要らしい。
もちろん決まっていない人もあと二人。
今日たまたま休んだ人一人と、君だった。
辺りからは大道具調達を進める声が聞こえる。
…どうやら僕は相当嫌われているらしい。
でも君は迷わず、
「私『衣装調達』の係りをやります!」
……『衣装調達』の方を選んだ。
そして僕のほうを向き片目を、CLOSE
YOUR
EYES
こうして僕と君は『衣装調達』の係りになった。
そして学園祭準備の日、僕と君は衣装調達をしに電車で駅三つ先にある総合病院へ向かった。
移動中。
僕は何も話さない。
まぁいつものことだ。
でも君は他の人とは違った。
こんな僕に盛んに話してくるんだ。
「ねぇ、衣装ちゃんと借りること出来るかなぁ?」
「……………」
「ねぇ、どのくらいで総合病院に着くの?」
「……………」
「ねぇ、もしちゃんと借りることが出来たとしてどうやって全部持って帰るの?」
「うっ……」
考えてなかった。
「やっと声が聞けた♪」
「…そんなに僕の声が聞けたことが嬉しいか?」
「もちろん!仲良くなるための第一歩だもん♪」
君はニコっと笑って、CLOSE
YOUR
EYES
仲良くなる…ねぇ。
「そんなに僕と仲良くなりたいか?」
「もっちろん!!あったりまえじゃない♪」
君は再び笑って、CLOSE
YOUR
EYES
…何か調子が狂う。
「それより本当にどうやって全部持って帰ろうか?」
「……とりあえずそれを考えるのは借りることが出来てからでも遅くないんじゃないのか?」
「…そだね♪」
……おぃおぃ。
午後六時。
総合病院に着いた。
僕達は早速、衣装を貸してくれるよう交渉する。
しかしなかなか一筋縄には行かない。
…まぁ当たり前だ。
僕は諦めて他の病院に行こうとした。
でも君は…
「お願いです!ちゃんと返しますから!!」
無駄だって。
「悪いけどそれは無理よ」
…当たり前だ。
「そこを何とか…お願いします!」
君は頭を下げて、CLOSE
YOUR
EYES
…無駄だっての。
「ごめんね、無理なのよ。できれば貸してあげ…」
「どうしたんですか?」
「院長、この子たちがどうしても医師と看護婦の服を貸してほしいと言って…」
「ほぅ、それは何で?」
「学園祭で必要なんです!」
「…学園祭ですか」
…だから無駄だって。
「…う〜ん………どれくらい必要なんだい?」
えっ?
「えっ!それじゃあ!!」
「えぇ、貸してあげますよ。ただしちゃんとクリーニングして返してくださいよ」
「はい!ありがとうございます!!え〜っとそれで数は…」
……………
院長の言葉で君は頭を深々と下げ、CLOSE
YOUR
EYES
なんでだよ。
何で借りることができるんだよ。
…その時はそう思った。
僕達は総合病院を後にした。
時刻は午後十時。
とんでもない時間になってしまった。
しかも突然の雨。
僕達は急いで駅に駆け込んだ。
衣装となる医師と看護婦の服は、結局学校に宅配便で送ってもらうことになったから濡れずに済んでいたが、僕はずぶ濡れになっていた。
そして君も…ずぶ濡れになって……
…なかなか大胆な格好になっていた。
僕は思わず目をそらした。
「どうしたの?」
「…なんでもない」
「なんでもないって…じゃあなんでそっぽ向いてる……」
……………
君はようやく自分の格好に気づいた。
…ぶたれるか?
暫くの沈黙……そして、
「……ゴメン」
「えっ?」
以外だった。
以外すぎた。
「だ、だからこんな格好じゃそりゃ目もそらすだろうなって思ったから。それを問い詰めたりしちゃって……」
……………
君の内面がわかった気がした。
…衣装を借りれた理由がわかった気がした。
そして僕はこのとき確信した。
君は他の人とは違う、と……
電車の中。
駅三つ分の時間。
その短い時間は僕の忘れられない時間になる…
僕は座席にどっぷりと座りこむ。
正直めちゃくちゃ疲れた。
それは君も同じだったみたいだ。
僕の隣にどっぷりと座りこむ。
僕はこの空間が学校の教室のように思えた。
周りに人はいない。
時間も時間だしな。
その状態が余計に教室を連想させる。
僕にとって教室と違ったのは君との距離だけだ。
……君は僕のすぐ隣。
……………静かだ。
……?
急に肩の辺りに重さを感じた。
隣を見ると、君が僕によりかかりながらCLOSE YOUR
EYES
疲れて眠ってしまったらしい。
………マジかよ。
…鼓動が聞こえる。
…これは僕のなのだろうか?それとも…君のなのだろうか。
そのときの時間は、いやらしいほどにゆっくりと刻まれていった。
……僕の心の中で。
僕と君は目的の駅に到着した。
僕と君はここで別れる。
別れる直前に僕は君に頼みごとをした。
君は少し考えた後、快く了承してくれた。
そして学園祭の準備は着々と進み…
僕は今、屋上への階段を上っている。
学園祭…
病院喫茶は以外にも好評らしい。
まぁそんなことはどうでもいいけど。
僕は衣装をゲットしてくればそれで病院喫茶での役目は終わりだから。
でも学園祭での役目はまだ終わっていない。
…そう。
君にあって言うことを言うまでは終わりではない。
僕は衣装調達の帰りの電車の中で、君が好きなことを悟った。
僕は隣の君を目的の駅に着いても起こそうとはしなかった。
…そのままでいたかったから。
君が自分で起きなければそのまま次の駅へと進んでいただろう。
まぁ君は起きてしまったけど。
僕は階段をひたすら上る。
その階段はやけにまっすぐに見えた。
屋上へと急ぐ。
君がいる屋上へと。
そして屋上への扉が見えてきて…
扉の先は青空。
雲一つない。
その景色をバックに一人の少女。
君は約束をちゃんと守ってくれていた。
僕はゆっくりと君の元へ行く。
そして君の目の前へ。
「約束通り屋上に来たけどいったい何?」
君は笑顔で問う。
「……………」
「ねぇ、どうしたの?」
「……君が」
「んっ?」
「………君が」
「なに?もったいぶらないで早く言ってよ」
「………君が好きだ」
「えっ?なに?よく聞こえない」
僕は少しムキになって…言ってやった。
「君が好きだ!」
……………しばらくの沈黙の後、
「……聞こえない!!」
間違いなく聞こえているはずなのに君はそう言った。
君は…笑顔だった。
少しも同様の顔がない。
……僕は君の意図が何となく分かったような気がした。
だから言ってやった!
「君のことが大好きだ!!」
声は青空に響き渡っていた。
……もしかしたらグラウンドにまで届いていたかもしれない。
「……私も君のこと好きだよ」
……君はそう言って答えてくれた。
僕は内気なだけではなくて鈍感でもあったらしい。
僕は君の気持ちに少しも気づいていなかった。
でも…嬉しかった。
だから……言ってやった。
「聞こえない!」
君は一瞬困ったような顔をしたけど、すぐに笑顔になって、
「私も大好き〜!!」
言ってすぐ僕に向かって、CLOSE YOUR
EYES
なんだかすっごくスッキリした。
「頼んだ通りちゃんと屋上に来てくれてありがとう」
「……来ないわけないじゃない」
その言葉を確認すると僕は言った。
「…なぁ、もう一つ頼んでも良いか?」
「……何?」
……………
静かな……
二人だけの空間が出来上がっていく。
お願いだから…
恥ずかしいから…
心の瞳で感じたいから……
二人だけでいたいから……
CLOSE
YOUR
EYES………
二人の空間は完成し、一つになった……
そして僕と君の学園祭が始まる……
End