第21話〜feat. KAORI IZUMIKAWA #3 [そして本番へ]〜

『おっはよ〜翔羽。朝だ――』
 ――カチッ
 十月十九日、日曜日の朝――六時半ジャスト。
 俺は、目覚し時計が鳴るのを確認すると、間髪いれずにそれを止めた。
 …………ものすごく、眠い。
 身体中に浸透しているだるさに耐えながら、ゆっくりと身体を起こす。
 ――全く寝た気がしなかった。
 何だかずっと起きていたようにも思えるし、知らぬ間に寝ていたような気もする。
 ただ、例え寝ていたとしても、それが浅い眠りだったのは確かだろう。
 今日のダブルデートのことを考えすぎて、全然まともに寝付けなかったんだ。

 泉川の元カレカップルとは、最寄の駅前で落ち合うことになっている。
 その時に気持ちを『泉川の彼氏モード』に切り替えるのは、いきなりすぎて上手くいかないような気がする。
 そのことを事前に泉川と話し合っていて、結局、今日になった時点で泉川の彼氏として行動することに決めていた。
 だから、すでに気持ちを『泉川の彼氏モード』に切り替えていなければならない。
 泉川を家まで迎えに行って、二人で駅前を目指す。
 そして、その間に接し方を確認。
 もし、元カレカップルが何か挑発してきたとしても、その挑発に乗らないようにする。
 また、それを未然に防ぐためにも、あまり元カレカップルと会話をしないように心がける。

 ……そんなことを、ずっとベッド上で考えていたんだ。
 そりゃ、寝付けるわけもないってもんだ。
 でも、一番の原因は、俺自身がデートというものをしたことがなく、そのことに対しての緊張がハンパではないということだろう。
 だが、いくら寝付けなかったからって、この眠気とだるさを引きずったままダブルデートに挑むわけにはいかない。
 ストレッチをして身体の覚醒を促してから、手早く着替えを済ませて一階へ。
 そして、いつも通りに朝食を作って食事を済ませると、身体を完全に覚醒させるために外へ出て、家の前の海沿い通りでジョギングを始めた。
 空は快晴で、絶好の行楽日和。
 その快晴のおかげか、朝からジョギングってのも結構いいものだなって素直に感じられる。
 海から吹いてくる潮風は涼しく、火照る身体を優しくクールダウンしてくれた。
 ジョギングをしながら俺は、今日のことを再び思案する。

 無事に終わってくれればいいんだけど……。泉川、大丈夫かな?
 ……やっぱり元カレのカップルとダブルデートだなんて、いい気分ではないだろうしな。
 昨日も、何だかんだ言ってかなり取り乱してたし。
 少しでも……俺がサポートしてあげた方が、やっぱりいいんだよな……。
 ……うぅ、やっぱり責任重大だ。

 結局、思案は俺を追い詰めていくだけなわけで。
 不安が一気に込み上げてきて、改めて気がめいる。
「ハァ……こんな状態で上手くいくのか?」
 ジョギングを止め、海岸と歩道を遮るパイプのような物で出来た白い柵に掴まって海を眺めながら、思わずそんなことを呟いていると、
「これから何かするの?」
「うわっ!?」
 突然の声に驚いて背後を振り返ると、そこに居たのはちょっと前まで満足そうに俺が作った朝食をほおばっていた姉貴だった。
 ダブルジップタイプの白いカットソーにジーンズを合わせた格好の姉貴は、軽く伸びをしながら、長髪をなびかせ笑顔でゆっくりと近づいてくる。
「ふふ、何驚いてるのよ」
「そりゃ、いきなり声を掛けられたら驚きもするっつ〜の!」
「それだけ〜?」
 意味深な笑みは、俺の中に不安感を発生させる。
「ど、どういう意味だよ?」
「だって、ほらぁ――」
 姉貴はそう言うと、横を向きながら、いつも登校するために進む方向を指差す。
 つられて顔を向けると、そこには――

「……おはよう」

 ――気まずさと眠気が合わさったような、そんな表情を向けてくる泉川の姿がすぐそこにあった。
 白を基調にピンクのラインが入ったワンピースと、その上から亜麻色のカーディガンを。
 そして、手には昨日も持っていた小さめのバッグを持っている。
 何だか昨日の格好とは打って変わって、随分と可愛らしさを重視しているように思える。
 まぁ、実際に可愛いと思う。
 ……って、そんなことはどうだっていい。
「な、何で泉川がこっちに?」
 様々な要因から発生する焦りのせいで、俺はまともに挨拶を返すこともできなかった。
(俺が泉川を迎えに行くハズ……だったよな?)
 なんてことを思いながら、いきなり泉川に質問を投げかける。
 すると、泉川は控えめに苦笑しながら話しだした。
「その……何か昨日、全然眠れなくってさ。それで、家に居て寝ちゃってもマズいから、とりあえず私が迎えに行っちゃおうかなぁって思って。
 ……でも、あんまり早すぎると迷惑かもしれないって思ってたら、何だか中途半端な時間になっちゃった」
「そういうことか。……実は、俺もあまり眠れなかったから、さっきまでジョギングしてたところだったんだ――」
 そこまで言ってから、泉川に近づいて小声で囁く。
「――ただ、ちょっとタイミングわりぃよ。……姉貴がいるところだとちょっと……な」
 俺の言葉に、泉川は「やっぱりそうだよね」と囁き返してくる。
 泉川も、俺と姉貴が一緒に居るとは想像していなかったんだろう。
 それこそ、外に居るなんてことは尚更。
 もちろん姉貴には、ダブルデートのことなど何にも言っていない。
 もし知られたりでもしたら、何を言われるかわかったもんじゃないし。
 ……少なくとも、何かしらの冷やかしを言ってくるのは確かだろうな。
 そんな、あってほしくないことを予想していると、背後から鋭い視線が……。
「あら、何か私がいるとマズいことでもぉ?」
 ……姉貴のわざとらしい声に、ものすごい悪寒を感じる。
 っつ〜か姉貴、地獄耳すぎるって……。
「い、いや、別に……な、なぁ?」
「えっ……う、うん」
「じゃあ今の言葉は何なのよぉ。……なんかズミちゃん可愛らしい格好してるし、絶対何か隠してるでしょ〜」
 相変わらずの鋭さに、返す言葉も見つからない。
 泉川も、そんな俺を見ながら、ただ黙って居心地悪そうにしている。
 姉貴はそんな姿を見て何か確信したのか、鋭い突っ込みを続ける。
「やっぱりそうなんだ〜。二人でどこかに出かけるんだぁ。……もしかしてデートぉ?」
「ち、違うって! そんなわけないだろ!!」
 俺は焦ってそんな言葉を叫ぶが、
「ふ〜ん、翔羽がデートね〜。しかも相手がこんなに可愛い子だなんて……。あぁ、これで私も安心だわ!」
 ……姉貴には全く効果を成さなかったようだ。
「だから違うって言ってるだろ!!」
 めげずに叫ぶと、姉貴の表情は真剣なものに。
 ――経験上、こういう時の真剣な表情は、俺に対して何かを忠告する態勢であることの証だ。

「違わないでしょ。……翔羽が嘘を吐くときの表情とか仕草なんて、ぜ〜んぶお見通しなんだから」

 ……ほら来た。
 予期していた通りの返答が返ってきて、ついうなだれてしまう。
 ここまで来ると、もう嘘を吐き通すのは不可能。
 ――そのことを、残念ながら俺は身をもって痛感していた。
「……わりぃ、姉貴に嘘を吐き通すのは無理みたいだ。……話しちゃっても、大丈夫か?」
 うなだれながら、泉川にそう呟く。
 泉川はその呟きを聞くと、少し困惑した表情を見せたが、俺の表情からその信憑性を察したのか、「……うん、大丈夫」と控えめに呟き返してきた。
 その返答を確かに受け取ると、俺は姉貴に、事の発端とこれからダブルデートをしに行くことを手短に告げる。
 ……正直、姉貴がどんな返答をしてくるのか、不安で仕方なかった。
 やっぱり冷やかすような内容の答えが返ってくるのではないかという思いが、俺の中で渦巻いている。
 ――だが、姉貴は何だかやけにスッキリしたような表情で、俺と泉川を見据えていた。
「そういうことかぁ。……ズミちゃんごめんね。こんなこと聞く形になっちゃって」
「い、いえ。……元はと言えば、私が悪いんですし」
「……翔羽、大変だと思うけど、ちゃんとズミちゃんの彼氏役をこなしてきなさいね」
「あ、あぁ……」
 ……たまに姉貴のことが、よくわからなくなるときがある。
 何というか、どの姉貴が本当の姉貴何だろうかと、困惑してしまうときがあるんだ。
 今も、その状態だった。
「それにしても、何だか楽しそうだから私もついて行っちゃおうかな〜」
 姉貴の、笑顔と共に放たれた言葉に、俺は思わず顔をしかめる。
 冗談じゃない。姉貴が来たりしたら、それこそ全てが台無しになってしまいそうだ。
「却下。……だいたい、姉貴がついてきたらカップルに見られなくなるだろ?」
「あら、私は邪魔者なのね。……そりゃそうよね。私が居たら、デートにならないし。それに、二人で『あんなこと』や『こんなこと』が出来なくなっちゃうもんね〜」
「だから違うって言ってるだろ!! っつ〜か『あんなこと』や『こんなこと』って何だよ!?」
「それは……ねぇ」
 姉貴は言いながら、ニヤニヤした笑顔で泉川を流し目に見る。
 泉川は、少し焦った表情を見せながらも、口ごもって何にも言えずにいた。
 姉貴の行動の意図を、いまいち理解できなかったが、今はそんなことについて考えている場合じゃない。
 ……って、疑問をふったのは俺か。
「……ま、とにかくそういうことだから」
 姉貴に向かってそう言ってから、泉川に「ちょっと着替えてくるから待っててくれ」と告げる。さすがに今の格好――愛用のジャージ姿――でダブルデートに挑むわけにはいかないし。
 そして、泉川が頷くのを確認すると、俺は小走りに家へと向かった。

 適当な格好に着替えて戻ると、泉川は姉貴と何やら談笑していた。
 泉川があまりにも自然な笑顔を見せていたから、つい気になって何の話をしていたのか聞いてみるが、姉貴が「女の子の話題だから、翔羽には教えられないよね〜」という言葉で、俺の問いを切り捨てる。
 泉川にとっても返答しにくい内容の話だったらしく、姉貴の言葉に頷いていた。
「ま、別にいいけど……。そろそろ、行かないと」
「うん、そうだね。それじゃあ先輩、そろそろ行くんで……」
 俺の言葉に頷いて答えた泉川が、少し名残惜しそうな表情で姉貴に告げる。
 姉貴は微笑みながら頷く……が、何だかその微笑が意味深に見えて、俺の中に一つの違和感を発生させていた。
 ……だけど、そのことについて問うほど、時間に余裕は無い。
「そんじゃ、行こっか」
 泉川が頷くのを確認すると、俺たちはゆっくりとバス停へ向かっていった。


 見慣れた道を、バスが軽快に走る。
 窓外に見えるのは、いつもと全く変わらない風景……なはずなんだけど、俺にはそれが、いつもとは全く違うものに見えていた。
 これは、俺が緊張しているからなのだろうか。
 バスが駅前へと近づいていくにつれ、高まってくる鼓動。
 すぐ隣に座っている泉川に、まともに向けられないでいる視線。
 定期的に流れるアナウンスも、俺には曖昧にしか聞こえないでいる。
 こんな状態で、俺は今日一日を乗り切れるのだろうか。
 ……正直、自信がなくなってくる。

 ――そういえば、さっきから泉川の声を聞いてない。

 ふとそう思い、ずっと前方を向いていた視線を、何とか泉川の方に移す。
 すると、そこにはただうつむいている泉川の姿があった。
 俺と同じように緊張しているのか、それとも不安感に苛まれているのか。
 その真相はわからないけど、一つ、その姿から認識できたことがあった。

 ――泉川の表情は、明らかに強張ったものになっていた。

 少し考えてみれば、すぐにわかることだった。
 これから、元カレのカップルの下へと向かうわけだし、しかも、その元カレは先日、嫌味ったらしい言葉を泉川に向けている。
 もちろん、そんな状況で楽しめるわけないし、自然な笑顔が出てくるはずもない。
 それを考えると、うちの前で泉川と姉貴が談笑していたのは、かなりすごいことだったんだと思う。
 姉貴の力――恐るべし。
 でも、たとえあの時は笑っていたとしても、今、強張った表情でうつむいているのは事実。
 このままだと、きっとダブルデート中に泉川は自分を抑えきれなくなってしまうのではないだろうか。
 何せ、その元カレは泉川の身体を、ある意味無理矢理奪っていった男なんだから。
 そんな元カレの前で平然としていられるとは、いくら泉川であっても思えない。
 今思えば、学校で俺に対して『あんなことやこんなこと。はたまたそんなことまでされちゃうかも……』なんてことを言ったりしたのは、過去の出来事を『笑い話』として捉えられるようになるために言った言葉なのかもしれないな。
 そうやって、過去を清算しようとしているのかもしれない。
 でも、実際はまだ、清算なんて出来ていないんだろう。
 だから、今も強張った表情でうつむいているんだ。
 ……ただ、そうは思っても、俺には泉川にかけてやるべき言葉が浮かんでこなかった。
 歯がゆさすら感じることの出来ない自分に、腹が立つ。
 せいぜい、俺に出来ることといったら、うつむいている泉川の背中を、軽く叩いてやることくらいだった。
 泉川は、一瞬身体をビクッと震わせながらも、視線を移して俺を見ると、ぎこちない微笑みを見せてうつむく体勢へと戻る。
 俺に泉川の胸中を理解することは出来ないが、それでも――痛々しく思った。
 そして、俺は『泉川を救ってやりたい』と、改めて心から思った。
 ――駅前までは、あと少しだ。


 そして、無情にもすぐにバスは駅前に到着した――にもかかわらず、泉川はまだうつむいたままだった。
 さっきと同じように軽く背中を叩くと、泉川は何かを再認識するかのように、その場で小さく頷く。
 そして、ゆっくりと立ち上がると、俺に向かってぎこちない微笑を見せながら、小さな声で囁いた。
「私……頑張るから。だから、橘……ん〜ん、翔羽も頑張ってくれるよね?」
 もちろん、俺に断る理由なんて存在しない。
「あぁ、もちろん。……結果がどうなるかはわからないけど、精一杯頑張らせてもらうよ」
 言いながら席を発ち、料金を払ってバスから降りる。
 泉川が下車するのを確認すると、俺は続けて言葉を放つ。
「ただ……あんまり無理はしないでくれよな。なんか……辛そうだしさ」
 そう、泉川は見るからに辛そうな表情を見せていた。
 バスに乗っていた間もそうだけど、下車し終えた今は、もっと辛そうな表情に見える。
 ここまで来たら、否が応にもダブルデートが待ち構えている。
 そのことがわかっているから、嫌だから、辛いから、今のような表情を見せているんだろう。
 そして、そんな泉川の表情を見ている俺も、とても辛い気持ちでいっぱいだった。
 もちろん、自分自信が抱えている緊張感もあるけど、それよりも、泉川の様子が心配だった。
 極端に言えば、俺は別に、泉川の元カレカップルと深い仲であるわけじゃないし、泉川が彼女なわけでもない。
 だから、俺にとっては、泉川の元カレカップルに何を言われようと、それほどショックは受けないだろう。まぁ、怒りは覚えるだろうけど。
 ……けど、泉川は違う。
 泉川にとっては、相手が元カレであって、自分のパートナーは偽者の彼氏である俺。
 そんな状態で、更に無理なんかしたりしたら、泉川は壊れてしまうかもしれない。
 ……そんな風に、思ったんだ。
 単に、俺が重く見すぎているだけなのかもしれない。
 けど、本当にそうなのかもしれない。
 思えば思うほど、泉川に対する気持ちが変化していってるように、感じた。
「……うん、アリガト。……でも、大丈夫だからさ、あんまり私のことばかり気にしないでいいから。折角なんだし、遊園地でしっかり遊んで帰ろうよ。……ね」
「あ、あぁ。……そうだな」
 俺は、適当な言葉を返すだけで精一杯だった。
 正直、今の泉川の表情を直視することが出来ない。
 ――この、あまりにも儚く、崩れ落ちそうなほどに歪んで見える表情を。


 ――午前十時十五分。
 切符を買い終えて、改札口前にある休憩所のベンチに座って待っていた俺と泉川の前に、ようやく泉川の元カレカップルが姿を現した。
 『都会の若者』というイメージを、そのまま形にしたような二人は、俺と泉川の前に立つと、相変わらずのニヤけた顔で話し出した。
「わりぃわりぃ。ちょっと準備に手間取っちまった。……コイツがメイクに時間かけまくっててよ〜」
「何よ〜。篤史だって髪セットするのに時間かけてたじゃな〜い」
「ん? そうだったか?」
「そうよ〜」
「そうか、悪かったな。……許してくれ」
「……もう、篤史ったら。最初っから、怒ってなんかないよ」
 ――そして、二人はキスをした。

 ……これは、俺達に対する当て付けなんだろうか。
 それとも、普段通りの行動なんだろうか。
 ――多分、前者が正解だろう。
 篤史と呼ばれていた、泉川の元カレの表情を見れば、そのことは明らかに思えた。
 ふと、心配になって泉川の様子を窺うと、何かに必死に耐えているように見える。
 ただ、その身体が小刻みに震え出していて、今にも元カレに向かって飛びかかっていきそうだ。
(出だしからこれじゃあマズいだろ……)
 そう思った俺は、ゆっくりと立ち上がり、なるべく平静を装って話し出す。
「……じゃ、そろそろ行こうか」
 そして、座っている泉川に向けて、手を差し伸べた。
 泉川は、ほんの一瞬躊躇したけど、すぐに表情をそれまでの強張ったものから柔らかなものに変えて、手を重ねてくれた。
 ゆっくりと引いて、泉川を立ち上がらせる。
 泉川の元カレは、そんな俺と泉川の様子をつまらなそうに見ていたが、すぐに視線を自分の彼女に戻し、手を繋いで改札へと向かって行った。
 俺たちも、後を追って改札へ……と、その前に――

「いずみか……じゃなくて、香織。……行こうぜ」

 ――言いながら、俺は泉川と手を繋ぎ直す。
 泉川はちょっと驚いた様子を見せたが、徐々に顔を微笑ませて、しっかりと頷いてくれた。
「――うん、翔羽」


 海沿いに続く線路を進む快速電車。
 その中のボックスシート。
 そこに、俺たち四人はひしめき合っていた。
 泉川の元カレカップルと向かい合う形で座っている。
 目の前でいちゃついている二人を見ていると、何だかそれだけで苛立ちを感じた。
 ――そんなに、泉川を追い詰めたいのかよ。
 泉川は視線を前方に向けるのが辛いのか、ずっと俺の方を向いている。
 何を話すわけでもなく、ただ視線だけを向けている泉川に、俺はただ視線を返すことしか出来ずにいた。
 どんな言葉をかけてやればいいのか、全くわからないんだ。
 それに、一刻一刻と時が進むごとに増してくる緊張感が、俺の全身を蝕んでいた。
 ……マズイ。明かにマズイ。
 何とか、この状態を打開しないと。
 とは思っていても、着実に遊園地への距離は縮まり、確実に時は経っていく。

 まだ――本番はこれからだ。


 ===あとがき=====

 第21話でございますぅ。
 お待たせいたしました。

 本話は……やっぱり『通過点』ですね。
 この後にある『本番』に向けての。
 ……でも、それでも本話には本話なりに必要なものが、ちゃんと盛り込まれています。
 たとえ、読んだ時の感想が「まぁ……通過点って感じだよなぁ」というものであっても、それは変わりません。
 だから、なるべくその『必要なもの』を意識していただきながら読んでいただけると嬉しいです。
 ……って、もう読み終わった後でしょうけどね(笑)

 さて、次話では、ようやく遊園地の中に突入します。
 元カレカップルとのダブルデート、その内容をお届できる……んじゃないかと思っています。
 ……実は、まだ書き終えていないんですよ(汗)
 ま、まぁ、気長にお待ちいただけると、とっても助かりますです。

 2004/07/18 20:21
 メインで使っていたPCが逝ってしまい、書いていた続きのデータを完全に紛失してしまった状態にて(号泣)



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