第8話〜feat. MANA MORINO #3 [翔羽の新たな苦悩?]〜

――九月十二日、金曜日。
 俺がbonheurのメンバーと対面した日から、すでに三日目。
 今日の天候は快晴。
 空は一面、ほとんど青で構成されている。
 まさに『清々しい朝』というやつだ。
 ……でも、俺はそんな快晴の空を喜べる状態ではなかった。

 俊哉さんの部屋で俺の気持ちを告げてから、森野さんは学校に姿を現していない。
 耶枝橋先生はホームルーム中に、
「森野さんは体調が優れないみたいで、お休みするっていうことです」
 と言ってたけど…俺にはどうしても体調不良が原因とは思えなかった。
 一日一日と過ぎていくうちに、クラス内でも心配する声が上がってくる。
「ねぇ、森野ちゃんまだ体調悪いのかなぁ?」
「ん〜、どうなんだろう? …連絡できれば良いんだけど、マナちゃんの連絡先知らないし〜」
 泉川とエイミーが数日前の昼休み中、心配そうにそんなことを話していたのを覚えている。
「ねぇ、ショウはマナちゃんの連絡先わかる?」
 ……なんて、エイミーが尋ねてきたりもしたけど、俺には、
「ちょっと…わからないな……」
 なんていう無愛想な返答しか出来なかった。

 ……本当は、森野さんの連絡先を俺は知っている。
 あの日、今後のことも考えて俊哉さんの部屋で聞いておいたんだ。
 でも……とてもじゃないけど連絡をすることなんて出来ない……。
 気が付けば、俺はあっという間に学校の駐輪場に到着していた。
「……ふぅ」
 胸の内にある重苦しい空気を、無理矢理に口から吐き出す。
 自転車を停めて教室を目指すが、その足取りは重かった。

 ゆっくりと階段を上ると、目指す教室まではあとわずか。
 直前の廊下まで差し掛かると、俺の足取りは余計に重くなった。
――教室の中を見ることが怖い。もし、今日も森野さんが来ていなかったら……。
 意識しないようにしていても、どうしても頭の中でその考えが発生する。
 しかし、いくら足取りが重くとも、その距離は短い。
 あっという間に教室の目の前に到着。
(……よしっ!)
 俺は意を決すると、ゆっくりと教室のドアを開けた。
 とりあえず顔だけで覗きこむ。
 教室の中には、当然の如くクラスメイト達の姿が。
 しかし……そこに森野さんの姿はなかった。
 がっくりと頭を垂れたその時……。
「橘く〜ん!!」
 突然背後から聞こえてきた、聞き覚えのある声。
 期待を込めて背後を向くと…そこには、間違いなく森野さんの姿が。
 ……っつ〜か、すぐ目の前にいるんですけど。
 そう思ったときにはもう、森野さんは俺に向かって飛び込んでいた。
「うわっ!!」
 俺は何とか森野さんの身体を受けとめようとする……が、勢いがすごすぎてその場で倒れてしまう。
 まぁ、何とか森野さんに外傷を与えることは避けることができたけど。
「いった〜!」
 ……だけど、俺は背中から思いっきり床に倒れたからやっぱりイタイ。
「おはよ〜橘君♪」
 森野さんは俺の状態を気にすることもなく、そんな陽気な言葉を投げかける。
 ……俺の目の前にいるのは、本当に森野さんなのか?
 そんなふうに感じてしまうほどに、森野さんの口調は変化していた。
「も、森野さん! とりあえずどいてくれっ!!」
 でも…やっぱり俺にはそのことを詳しく考察するほどの余裕は無い。
 必死に告げるが、森野さんはしばらく離れようとしなかった。
 森野さんは今、仰向けに倒れている俺の……の辺りに腰をおろした状態。
 必然的に俺の意識が混乱状態に陥り、限界が近づいてくる。
「た、頼むから…どいてくれ……」
 俺の声は徐々にかすれていく。
 ……意識が遠のいていく中、教室内が騒がしくなっていくのを否応なしに耳から伝えられる。
「あ〜! マナちゃんだぁ!!」
「ホントだっ!! …って、何でこんな状態!?」
 ……多分、今の声はエイミーと泉川だろう。
 二人が近づいてくるのを確認することが出来たのを最後に、俺の意識は途切れる。
 ……久しぶりの気絶だった。

「……あっ、起きた♪」
 ゆっくりと目を開けた瞬間、飛び込んできたのは森野さんの顔だった。
 ……しかもかなりの至近距離。
「う、うわっ!」
 思わず間抜けな声を出してしまう。
 ある程度落ち着きを取り戻してから上体を起こし周囲を見回すと、毎度の如くここは保健室だった。
 ふと壁に掛けてある時計をチェック。
――どうやらまだ、倒れてから一時間半程度しか経っていないようだ。
(……ということは、今は二時限目後の業間休み中か)
 俺が気絶のタイムラグを修正していると、突然右側からやけに真剣な声が。
「……さて、橘も起きたことだし……説明してもらいましょうか」
 ……それは、ムスッとした表情を見せる泉川の声だった。
 よく見ると泉川の背後には、エイミーや日奈子の姿も。
「せ、説明って?」
「わざわざ聞かなくてもわかるでしょ! …だから、その……なんであんな状態になったのかってこと!!」
 泉川は言いながら頬を紅潮させている。
 ……言いたいことが良くわかった。
「あ、あれは……」
 俺が森野さんを見ながら言葉に詰まっていると、
「あっ、あれは私が橘君に抱きついたからだよね〜♪」
 ……発生源が森野さんの口であることを疑ってしまうような内容の言葉が、森野さんの口から放たれた。
 他の皆も同じようで、皆一様に目をパチクリさせている。
「ど、どうしちゃったの……森野ちゃん……」
 泉川が何とかそんな言葉をひねり出す。
 エイミーや日奈子も同意権な様で、キツツキのように頭を上下させている。
「『どうしちゃった』って……う〜ん……まぁ、これが本当の私だったってことかな♪」
 ……皆ポカーンとした表情を見せていた。
 そりゃそうだ。今までの森野さんとは、あまりにもギャップがありすぎる。
(でも……本当に良かった)
 俺はいろんな意味で心からそう思っていた。
 あの、人見知りの良い例みたいだった森野さんが、こんなに明るい森野さんに『なった』……いや、『戻れた』こと。
 そして、俊哉さんの部屋での状況から見事に立ち直ってくれたこと……。
 嬉しくて、つい顔がほころぶ。

 キーンコーンカーンコーン……。

「やばっ! 早く戻らないとっ!!」
「あっ…エイミー、三限って何だったっけ?」
「ん〜、確か体育だったはずだよ〜」
「…じゃあ体育館だね」
 予鈴が鳴ると、泉川、日奈子、エイミーの三人が揃って慌てだす。
「あっ、わるいな。後から行くから先行っててくれ」
「言われなくてもそうするっつ〜の!」
 泉川は俺の言葉にそう返答すると、日奈子とエイミーを連れてそそくさと保健室から出ていった。
「…森野さんも先に行ってていいから」
 俺はそう告げるが、森野さんは全く動く気配を見せない。……それどころか、
「……ヤダ」
「えっ?」
 不意の拒否に、つい漏れた言葉を認識する間もなく、森野さんはベッドの上で正座体勢になり俺に抱きついてきた。
 俺は抵抗する体勢に入ろうとするが、その前に森野さんから新たな言葉が紡がれる。
 ……だが、その表情は穏やかな笑みに変わっていた。
「……橘君、ホントにありがとう。橘君のおかげで私はこんなに変われたよ」
 ベッド上で抱きつかれているという状態は変わらないけど、俺の中にある危機感は徐々に薄れていっていた。
 なんだろう……何だかとっても暖かい。
 ……上手く表現できないけど。
 少なくとも、森野さんの感謝の気持ちはこれでもかと言うほどに伝わっている。
 俺は、その気持ちに見合ったことをすることが出来ていたのだろうか……。
「……俺は別に森野さんのために何かをしたとは思ってないよ。変われたのは…森野さん自身の気持ちのおかげなんだからさ」
「橘君……」
――何故かお互い見詰め合った状態での沈黙。
 抱きつかれているということとも相俟って、俺の心臓はその動きをフル回転させていた。
 ……森野さんの瞳は、俺に何かを訴えかけているかのよう。
 そして……ゆっくりとその瞳を閉じて、軽く顔を突き出す形に。
 ……俺は…どうすれば良いんだろうか。
 これは、どう見たってキスを受けようとする体勢じゃないか……。
(………いいのか?)
 思わず自問してしまう。
 ……そもそも、森野さんは俺に対して好意を抱いているのだろうか?
 もし、俺に対する『お礼』みたいな感覚でのことだとしたら、正直あまり良い気分ではない。
 でも……もし本当に俺に対する好意からだとしたら……。
 ……そう考えると、改めて森野さんの容姿を確認してしまう。
 一見、どこにでもいそうな普通の女子高生。
 少し大人びて見えるのは、目と眉毛の印象が強いからだろうか。
 まぁ目は閉じられているから、それを確認することは出来ないが。
 そして……下手にいじられていない唇……。

――あの唇に触れてみたい。

 そんな感情がふつふつと湧いてくるのを、俺は自覚せざるを得なかった。
 ……珍しいことなのかどうかはわからないけど、女性恐怖症であることもあって俺は今までキスというものをしたことがない。
 まぁ幼稚園の頃とかに、あまりその意味を考えることもなく近所の子としたことはあったみたいだけど。
 でも……そんなのはキスとしてカウント……されないよな。
 とにかく、女性恐怖症が何気に改善されつつある状態の今、俺はキスという事象への興味をものすごく感じるようになっていた。
『もう、女性に対する恐怖心に束縛され続けることはないんじゃないのか』
 なんて思えるようになっているのだから。
 現に、今だって森野さんに抱きつかれている状態でも気絶せずにいられてるし。
 まぁ、全く気分が悪くないわけではないけれど。
 ……色々考えているうちにも、時間は着実に刻まれていく。
 だが、決してその時間は無駄ではなかった……。

――俺は、ゆっくりと唇を重ねる体勢に……。

 ……入ろうとしたんだけど、その時にはもう森野さんの瞳はゆっくりと開かれていた。
「……くすくす、ちょっとはその気になったりした?」
 森野さんはそう言うと、ゆっくりと俺に巻きつけていた両手を離し始める。
 そして、視線を俺から外し両足をベッド外に垂らした状態へ。

 ……………。

「あっ、そうそう、昨日橘君が送ってくれた新曲、もう完璧に覚えちゃったよ♪」
 鼓動の高鳴りを改めて実感させてくれた沈黙を破って、森野さんは新たな話題を切り出す。
 ……そう、俺は昨日までにbonheurの新たな楽曲となる曲、『True Place』を完成させていた。
 俊哉さんとメールで連絡をとりながら、空いてる時間のほとんどを制作作業に費やした成果だ。
 メールでの連絡の中で、俊哉さんが『実際に奈央と一緒に演奏をしながら編曲してる』と言っていたから、多分演奏の方もバッチリなんだろう。
「もう覚えたのかよ。…さすがだな、ホント」
「そんなことないって〜。昨日までずっとメロディーを聴き続けて、歌詞を覚えたのも昨日の深夜にようやくって感じだったし。……で、突然だけど、明後日に駅前にある『R'x(ルックス)』っていうライブハウスで早速ライブすることにしたから」
 森野さんから告げられた言葉に、俺は思いっきりドキッとした。
――俊哉さんの部屋で、森野さんがライブに参加することを提案した結果、森野さんを泣かせてしまうという状況を招いてしまっていたから。
「……で、森野さんは?」
 俺は、恐る恐るそう尋ねる。
 ……尋ねないわけにはいかなかった。……一連の出来事の原因を作ってしまったからには。
 森野さんはゆっくりと視線を俺に戻し、そして問いに対する返答を話し出した。
「もちろん私も出るよ。……もう、逃げないって決めたんだから♪」
「そ、そうか……」
 俺は喜びを通り越して、心からホッとしていた。
『森野さんが変わってくれただけでも十分に嬉しいことだけど、ここまで来たらライブにも出てもらいたい』
 ……そう密かに思っていたから。
「それと…良い機会だからクラスの皆にも私のこと知ってもらおうって思ってるんだっ♪」
「えっ、それって……」
「私がbonheurのボーカルだってことをねっ。……それで、橘君に一つ『お願い』があるんだけど」
 森野さんはそう言うと、俺の耳元に顔を近づけて囁きだす。
(わざわざそんな小声で言わなくてもいいんじゃないか)
 とも思ったけど、まぁそんなこと今の俺にとってはどうでもいいことだった。
 今はしっかりと、森野さんの『お願い』を聞き入れるのみだ。
 森野さんの『お願い』は、俺にとって『森野さんが変わった』ということを改めて実感させてくれる内容のものだった。
 俺は何のためらいもなく、すぐにその『お願い』を受け入れる。
 すでに、頭の中は明後日のことでいっぱいになっていた。

「…あのさぁ、ちょっと耳寄りでお得な情報があるんだけど聞いてくれるか」
 昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴ったのと同時に、俺は四日前の『転入歓迎パーティー』を開いてくれたメンバーに向けてそう切り出した。
 由紀や泉川や高遠さんなんかは、最初は何故か不信気な表情を見せていたけど、他の皆が素直に聞く体勢に入ったのを見て、同じように聞く体勢に入ってくれる。
「実は…まぁ藤谷さんと由紀とエイミーと森野さんは知ってると思うけど、俺、bonheurのボーカルの人とコンタクト取っててさ」
 ……なんか本人の前で言うのは変な気分だな。
「あぁ、エイミーさんから聞きました。私は残念ながらbonheurさんのことは知らないんですけど、有名なバンドらしいじゃないですか」
 春日井さんの言葉に、他の皆もうなずく。
(……エイミーは口が軽い……っと)
 ……密かに頭の中でメモっておく。
「あっ、そうなんだ。じゃあ話は早い。…そのbonheurが、今度の日曜日に駅前の『R'x』っていうライブハウスでライブやるんだって。……で、そのライブのチケットをボーカルの人が送ってきてくれたんだよ。……しかも十枚も。だから皆で行こうか――」

『行くっ!!』

 ……全てを言いきる前に、返答が合唱となって返って来た。
 改めて、bonheurの人気ぶりを実感する。
 ふと森野さんの様子をうかがうと、笑顔で答えてくれた。
 ……けど、どことなく緊張がうかがえる。
 俺はそのとき、一つ誤解をしていたことに気付く。
――森野さんは『変わった』んじゃなくて、『変わり始めている』んだ。
 そう、冷静に考えてみればたかが三日間で『変わりきれる』わけないじゃないか……。

「そんじゃ、ライブは午後五時からだから……四時半に『R'x』の前で集合ってことで」
 その言葉で、皆は各々昼食を取りに離れていく。
 森野さんは他の皆が散っていったのを確認すると、俺に向かってVサイン。
 ……そう、森野さんの『お願い』とういうのは『皆をbonheurのライブに誘う』ということだったんだ。
 俺は森野さんにVサインを返すと、いつも通り購買へ……って、
「やべぇ! スペシャルコロッケサンド無くなっちまう!!」
 必死で教室を飛び出すが……間に合わないだろうな。

――時は経って日曜日。
 今日の天候はあいにくの雨。
 ちょっと冷え込んでいたから、トップスにグレイのパーカーを着ていくことにした。
 ボトムスはいつも重宝しているジーンズだ。
 カーキで手提げ型のバッグに、あらかじめ森野さんからもらっておいたライブのチケットが入っているのを確認して家を出る。
 家の前にある海沿いに面した通りの途中に、駅前へ向かうバスが停まるバス停がある。
 俺は傘を差しながらそのバス停まで移動して、バスが到着するのを待つ。
 駅は学校の前の大通りをずっと進んでいくと、その突き当たりに存在している。
 家から自転車で行くと、どんなに頑張っても三十分くらいはかかってしまうし、何よりこんな雨の中を自転車で移動するのがイヤだったから、こうしてバスで向かうことにしたんだ。
 バスは二・三分待った後にやってきた。
 日曜日ということもあるのか、バスはわりと空いている。
 バスの中で、俺は『今日のライブがどういう結果をもたらすのか』ということをずっと考えていた。
 今日のライブ……始めて森野さんが実際に参加するもの。
 はたして、観客はどんな反応を見せるのだろうか。
 そして、その中でもクラスメイト達の反応……。
 ……それが、一番今気にかかっていることだ。
 今までずっと隠し通してきた事実を知ったクラスメイト達は、いったいどんな態度を取るのだろうか。
 驚く…のは間違い無いだろうけど……もしかしたら『何で今まで言ってくれなかったの!?』といった反感をかってしまうかもしれない。
 それは……ある意味仕方の無いことなのかもしれない。
 少なくとも、クラスメイト達が悪いわけではないのだから。
 でも…出来ることなら、丸く治まってほしいと思う。
 同じく隠し事をし続けている俺としては……。

 駅から数分歩いた先にある、ライブハウス『R'x』。
 そこは、思っていたよりしっかりとした建物だった。
 入り口の前には『Today's Live』と書かれた看板があり、その中にbonheurの名前も確かに刻まれている。
 開始時間やスタイルなども書かれていて、俺はイメージから『オールスタンディング』なのかと思ってたんだけど、ちゃんと椅子が用意されているみたいだ。
 現在時刻は午後四時。
 一応、俺が皆を誘った形になっているから、早めに到着するように家を出たんだ。
「あれっ、翔羽君もう来たんだ〜」
 突然のライブハウス入り口からの声に、視線を看板から入り口へと移す。
 するとそこには、軽く汗をかいた奈央さんの姿が。
 奈央さんは、ちょっと変わったデザインのノースリーブシャツ――左側は袖が無いだけではなく肩部分もカットされている、白をベースに縁の部分のみ赤くしたもの――にジーンズといった格好。
 ……肩から黒いブラジャーのヒモが見えていて、ちょっと目のやり場に困ってしまう。
「えぇまぁ。一応、俺がチケット持ってるんで遅れるわけにはいかないですからね」
「……そういえば舞羽ちゃんは来ないの?」
「あぁ…クラスメイトの分でチケット使いきっちゃうんで」
「あら、そういうことならチケット用意してあげたのにぃ」
「いや……姉貴が来ると俊哉さんが困っちゃうんで……」
「あはは、確かにそうかもね。……あっ、そうだ。他の子が来ないうちに愛呼んでおこうか?」
「あっ、そうですね。…お願いできますか」
 俺がそう言うと、奈央さんは左手で軽く合図をしてR'xの中へと入っていった。
 ……とりあえず、雨の被害を受けないR'x入り口へと移動。
 傘をたたんで、改めてバッグの中のチケットを確認する。
 チケットには開演時間と座席番号が書かれていた。
 座席番号は連番になっていて、森野さんが配慮してくれたということがうかがえる。
 とりあえず、席がバラバラになることはなさそうだ。
 しばらくすると、R'xの中から森野さんが姿を現した。
 オレンジの半袖ニットに、腰より少し下に茶のデザインベルトが巻かれたカーキのミニスカートといった、特にインパクトがあるとは言えない普通の格好をしている。
 森野さんはやっぱり緊張している様子だった。
 そりゃ、森野さんにとっては初ライブになるんだから、緊張しないわけがないだろう。
 とはいえ、以前までの暗い雰囲気は存在しない。
 むしろ、その緊張を楽しんでいるかのようにすら見うけられる。
 ……ってのはちょっと言い過ぎかもしれないか。
 でもそれくらい森野さんの中から、不安よりも勝る期待感や好奇心といったものを感じ取ることが出来た。
「あれ、奈央さんは?」
「あっ、中でサウンドの最終チェックをしてくれてる」
「そっか。……どう、調子は?」
「うん。…やっぱりちょっと緊張はしてるけど…でも何だか楽しみな気持ちでいっぱいなの」
「はは、そりゃこっちも楽しみだ!」
 ……ホントに心から楽しみだ。
 『自分がbonheurの楽曲に携わったから』ということからの『楽しみ』もあるが、それよりも単純に『bonherの曲を生で聴くこと』が『楽しみ』でならなかった。
 しばらく入り口前で森野さんと雑談していると、徐々にクラスメイト達が集まり始めた。
 皆それぞれ、それなりに『よそ行き』の格好をしている。
 予定時刻の四時半より少し遅れたけど、無事全員揃ってR'xの中へ。
 もちろん、森野さんも一緒に入る。
 ……俺以外は皆、森野さんがbonheurのボーカル、『MANA』であるということを知らない。
(森野さんがbonheurのボーカルだってこと知ったら、皆驚くだろうな……)
 ライブが目前に迫ると、余計にそのことに心配を覚えてしまう。
 大丈夫だとは思うけど……。

 R'xの中に設置された椅子は、すでに満席となっていた。
 俺たちの席は、なんと最前列。
 ステージはそれほど高く設置されているわけではないから、最前列でも見上げる必要はなさそうだ。
 俺はその最前列のちょうど真ん中辺りの席。
 まさに絶好の位置だ。
 左手には森野さんが居て、たまにチラチラと俺の方を向いては微笑を見せている。
 ……なんか落ち着かない様子だ。
――定刻の五時。
 様々な機材や楽器の置かれたステージ上に、俊哉さんと奈央さん、そしてステージミュージシャンと思しき人が姿を現した。
 会場は一気に盛り上がりを見せる。
 ……って、森野さんはまだ俺の横に居るじゃないか!?

 ……どういうことだ?
 森野さんはライブに出るって決心したはずじゃないか。
 なのにどうして……。
 驚きと不安にさいなまれていると、そんな俺をよそにステージ上で俊哉さんと奈央さんが観客に向けての挨拶をし始めた。
「今日は突然決まったライブにもかかわらず、こんなにたくさん集まってくれてありがとう!」
「最高にヤバいライブになるから、皆覚悟してよね〜!!」
 二人の叫びに、会場はよりいっそう盛り上がる。
 クラスメイト達も皆一様に感情を高ぶらせていた。
 ……俺と森野さんを除いては。
(いったいどういうことなんだよ……)
 俺は声なき『声』を森野さんに向けるが、森野さんはただ黙って微笑み返してくるだけ。
 一向に止まない歓声の中、bonheurのライブ一曲目のメロディが流れ出す。
 聴こえてきたフレーズは、隣からではなくステージ上に設置されたスピーカーから流れていた……。

 俊哉さんと奈央さんの演奏はすばらしいものだった。
 パソコンでデータ化されたものを聴くのとは、やっぱりわけが違う。
 でも……俺はそのことに素直に感動できずにいた。
 原因は言うまでもなく……俺の隣に居る森野さん。
 森野さんはたまにステージ上の俊哉さんや奈央さんと目が合っては、控えめに右手で答えていたけど……それだけだ。
 俺は何ともやるせない気持ちを感じていた。
 結局俺は、森野さんの心を完全に動かすことが出来なかったんだ。
 だから森野さんは、自らライブに参加することを拒んだんだろう。
(………くそっ)
 何だかとても悔しかった。
 ……森野さんが悪いわけではない。
 俺が中途半端に森野さんの心を振動させたから、森野さんは悩み続けなければならなくなったんだろう。
 だから学校も休んだりしたんだろう……。
 思案している間にも、ライブは快調に進んでいく。
 チケットに記してあった予定の演奏曲数である六曲のうち、すでに四曲の演奏が終わっていた。
 ここまでは休憩が入ることもなくノンストップで演奏されている。
 しかし、ここにきて俊哉さんがマイクを持ってステージ中央へと移動し始めた。
「皆、盛り上がってるかっ!」
 そう言ってマイクを観客に向けると、大歓声で答えが返ってくる。
 もちろん、当然の如く観客はオールスタンディング状態だ。
「ありがとう! …えっと、これから演奏する二曲は新曲だから、皆心して聞いてくれっ!!」
 俊哉さんの言葉に続いて、奈央さんがステージ中央へ。
「それでね〜、今日は皆に紹介したい人がいるんだ〜」
「…あれっ、マナちゃんどこ行くの…トイレ?」
 奈央さんのMCが続く中、森野さんの左に居たエイミーの呟く声が聞こえてくる。
 突発的に左側を向くと、森野さんが一歩前へと踏み出していた。
 俺の視線に気付いた森野さんは、俺に向かってVサインを見せる。
(………そっか!!)
 俺が確信したのと同時に、森野さんは勢い良くステージの上へと飛び出した。
 クラスメイト達はもう、何が起こったのかわからないといった表情でステージ上に立つ森野さんを見つめている。
 観客も一瞬どよめきを見せたが、続く奈央さんの言葉で盛り上がりが最高潮になることに。
 奈央さんは森野さんの肩をポンっと叩いてから、その言葉を放った。
「紹介します。……bonheurのボーカル、『MANA』っ!!」
 瞬間、耳をつんざくような大歓声がR'xの中を駆け巡った。
 クラスメイト達はというと……なんか現状を把握できていない様子。
 俺はもう……とにかく嬉しかった。
「皆さん始めましてっ! bonheurボーカルのMANAです。……今までずっと私自身の気持ちの整理が付かなくて、ライブに参加出来ないでいました。…でも、ようやくキッカケを掴めて気持ちの整理も付きました! これからは、必ずライブに参加出来るようにしますので、新しくなったbonheurをよろしくお願いします!!」
――湧き上がる熱気。
――とどまることを知らない歓声。
 今に限っては、その全てが森野さんに…いや、MANAに向かって注がれていた。
 自然に観客の中から『MANAコール』が起こりだす。
 森野さんは…完全にbonheurのボーカル『MANA』として受け入れられたようだ。
「ありがとう! …それじゃあ、早速新曲を披露します……って言いたいところですが、その前に、もう一人皆さんに紹介したい人がいますっ!!」
 森野さんはそう言うと、奈央さんと一緒にステージから下り出す。そして……。
「えっ…」
 ……二人は俺の目の前に立っていた。
 そして、半ば無理やりに俺をステージ上へと連れ出す。
 その最中、奈央さんが小声で「名前出してもOK?」と聞いてきて、俺は意味もわからず衝動的に頷く。
 その様子を見た森野さんは、満足そうに手を俺の肩に組んで観客の方を向いた。
「紹介します! 私たちbonheurの新曲を作詞・作曲してくれた……そして私に『キッカケ』を与えてくれた橘君ですっ!!」
 ……観客の視線が全部俺に向けられている気がして、何だかとっても恥ずかしい気分になる。
 っつ〜かそれ以前に、この状況をどう理解すればいいんだろうか。
 俺は、とりあえずボーっとしているわけにもいかないから、片手を上げて観客の視線に答えた。
 ……森野さんに無理やり肩を組まれてる状態だから、身長差的に前かがみになっちゃってるのが何か不恰好な感じがしたけど。
 それに、やっぱりちょっと気分も悪くなる。
 でも、とりあえず観客は拍手を送ってくれてたから、気持ち的には少し落ち着くことが出来た。
 ふと最前列のクラスメイト達を見ると、エイミーや由紀や春日井さんは衝撃から立ち直るのが早いらしく、こちらに向けて笑顔を見せている。
 ……由紀の笑顔はやけにニヤニヤとしたものだったけど。
「橘君がいなかったら、私は多分まだライブに参加することは出来なかったと思います。…そのことに対する感謝もこめて新曲、歌います。……聴いてください。『True Place』!!」
 森野さんの言葉が放たれて、True Placeの演奏は始まった。
 ……って、俺はいったいどうすればいいんだ!?

――背後から、心地よい音色が聴こえてくる。
 とりあえず俺は、この身を森野さんに任せることにした。
 もうココまで来たら何でもアリだ。
 ただひたすら意識を集中するのみっ!
 森野さんに肩を組まれた状態のまま、イントロ部分の演奏が終わり、いよいよ森野さんの声が観客の前で披露されるときが来た。

 ++++++++++++++++++++

      bonheur - True Place

 ++++++++++++++++++++

 心の泉に 小さな船を浮かべて
 新しい場所=@みつけたい
 光=@求めて

 切なさの渦 乗り越えてゆく幻想
 孤独の嵐 耐えぬける
 希望=@抱いて

 「暗闇の中 抜け出す勇気を
 あなたも きっと 持っているから」
 その言葉は 胸の奥でほら
 優しく光 輝いてるよ

 Don't stop , Believe my heart
 動き出せば ほら
 大切なものを みつけられるから

 We Know , You have shinin' power
 本当の君
 翼をひろげて どこへでも 翔べる


 「言葉では伝え られない想い
 誰もが 秘めて いるはずだから」
 いつの日にか 全てをあずけて
 いられる人に 出逢えるはずさ

 Don't stop , Believe my heart
 動き出せば ほら
 大切なものを みつけられるから

 We Know , You have shinin' power
 本当の君
 翼をひろげて どこへでも 翔べる

 For you ねぇ Don't be afraid
 君が想う ほど
 世界≠ヘ狭くない さぁ一歩 前に


 そこは 君の場所 なんだよ…

 ++++++++++++++++++++

 ……一瞬、観客の反応は微妙だった。
 今までのbonheurには無いスローバラードタイプの曲だったからだろう。
 でも、それもホントに一瞬のこと。
 どうやら反応が微妙だったのは、皆心に来るものがあったからみたいで、余韻の後、観客の歓声が爆発した。

『MANA〜!!』
『bonheur最高〜!!』
『新曲いいよ〜!!』

 ……間違いなく好印象。
 俺はもう……完璧に感動していた。
 自分が創った曲を、インディーズバンドが演奏してくれて、しかもその演奏を聴いた観客が感動してくれている。
 こんなに嬉しいことは滅多にないだろう。
 ……思わず泣きそうになる。
「うっ…うぅ……」
 ……泣いているのは俺ではない。
 すぐ横に居る森野さんだ。
 森野さんは俺と肩を組んでいる状態のまま、人目を気にすることも無く泣いていた。
 ……感極まったんだろう。
「森野さん……」
 俺が呟きながら肩を軽く叩くと、森野さんは勢い良く抱きついてきた。
 ……普段なら抵抗の一つや二つ見せるところだけど、さすがに今はそんな状態ではない。
 とりあえず素直に受け止めて、再び肩を優しく叩いてやる。
――俺を抱きしめる森野さんの手がきつくなっていることを、俺の身体は敏感に感じ取っていた。
 ……正直、そろそろ限界に近い。
 意識が遠のき始めている。
 こんなところで気を失ったりしたら、それこそ大問題だ。
(何とか…もう少し耐えないと……)
 そう思っていた矢先、森野さんはゆっくりと手を解いて俺を見据えだした。
 ずっと前のめりだった体勢を直立に戻し、俺は森野さんの肩を再度軽く叩いてやる。
――『まだ終わりじゃないよ』という気持ちをこめて。
 その気持ちが通じたのか、森野さんは潤んだ瞳のまま微笑みながら頷く。
 そして……。
「皆…ありがとう……。あと…あともう一つ新曲がありま…す」
 途切れ途切れながらもそう言うと、森野さんはゆっくりと目を閉じ涙を拭って……満面の笑みを見せた。
「…次が最後の曲です。この新曲は、True Placeとは違って、いつもみたいに明るい曲だから……皆最後、盛り上がっていこうね〜!!」
――あぁ、もう大丈夫だ。
 そのことを俺の直感が伝えていた。
 観客の歓声も最高潮に達している。
「聴いてください。……『シグナル』っ!!」

 ++++++++++++++++++++

       bonheur - シグナル

 ++++++++++++++++++++

 ずっと見てた 君の横顔
 愛しくて そっと Kissした
 今も続く 夢の様な世界
 激しく 胸を高鳴らす

 おおげさな 態度をとっても
 キミとシグナル 合わせられないの?

 ねぇ Please tell me now!
 すぐに Please touch me now!
 そう 今こそキミの元へ Let's jump!


 そっと触れる キミの指先
 寂しくて ギュッと 握った
 明日も会える そんな気がした
 待ちきれなくて キミにOne mail

 この壁≠ 脱ぎ捨ててみたら
 キミとシグナル 合わせられるかな?

 ねぇ Please teach me now!
 すぐに Please love me now!
 そう 必ず来る未来へ Let's jump!


 今もさまよっている 私のシグナル
 どんなときも キミの姿 探しているから


 ねぇ Please tell me now!
 すぐに Please touch me now!
 そう 今こそキミの元へ

 ねぇ Please teach me now!
 すぐに Please love me now!
 そう 必ず来る未来へ

 Let's jump! Let's jump! Let's jump!


 たった一つの シグナルへ

 ++++++++++++++++++++

 森野さんは、初めてのライブ参加とは思えないほどの軽快な動きを見せていた。
――いわゆる、ライブパフォーマンスというものだ。
 ステージ上をめいいっぱい動き回り、ときには俺を巻き込んだりも。
 『そっと触れる キミの指先 寂しくて ギュッと 握った』のところで、実際に俺の指を握るしぐさを見せたり、たびたび出てくる『キミ』というフレーズのときに、俺の方を指差してみたり。
 ……正直ちょっと恥ずかしかった。
 まぁそれはともかく、『Let's jump!』のところで観客と一緒にジャンプをするというのは、今後もbonheurのライブでは定番になりそうだ。

「……橘……森野さんがbonheurのボーカルだったこと、知ってたんでしょ」
 ライブが無事終了し、R'xから出てクラスメイト達と合流してすぐ放たれたのは、由紀のそんな言葉だった。
「まぁ…な。でも、俺だって知ったのはついこの前なんだよ。…ほら、この前皆で『転入歓迎パーティー』を開いてくれた日」
「…じゃあ、その後に学校で教えてくれてもいいじゃないか〜」
「そ、そんなこと言われても……」
「ったく、自分だけ知ってたなんてズルいぞ〜!!」
 由紀の言葉は俺を批難するものだったけど、その表情は笑顔。
 きっと、森野さんが学校を休んでいた理由をなんとなく理解出来たから出てきた笑顔だろう。
 他の皆も、さっき言った理由からか、もしくはライブで得た満足感からか笑顔が絶えない。
 ふと空を見上げると、降り続いていた雨はやんでいた。
 雨上がりの冷たく湿った空気が、熱気で火照った身体に心地よい。
「……あっ、森野ちゃん!」
 泉川の言葉に反応してR'xの入り口の方を向くと、そこにはマラソンをした後の様な汗だくの森野さんが。
 森野さんは俺たちに気付くと、はにかみながら手を上げて近づいてきた。
「マナちゃんすごいすごいっ!! マナちゃんがbonheurのボーカルだったなんて、エイミー、ホントにびっくりしちゃったよ〜!」
「本当に驚きました。…正直、ちょっと意外でした」
 エイミーと春日井さんの言葉を聞いた森野さんは、朗らかな微笑を見せる。
「くすくす、びっくりしたでしょ〜。……ゴメンね、今まで黙ってて」
 森野さんはそう言ってゆっくりと頭を下げたが…実際、そのことを怒っているやつなんていなかった。
 ……いるわけなかった。
 むしろ、こうやって本当の自分を見せてくれたことが、皆にとってはとても嬉しいことなんだ。
 実際、皆森野さんに優しい視線を送っている。
――俺も見習わなきゃいけない……んだろうな。
 そう実感していると、森野さんが俺に向かって言葉を放ちだした。
「橘君…ホントにありがとう。ライブが成功したのも橘君のおかげだねっ♪」
「…何言ってんだよ、森野さん自身が頑張ったからだろ」
「……アリガト。でも、私が自分を出せるようになったのは、ホントに橘君のおかげだから。……こんな風にねっ♪」
「えっ?」
 そう言ったときにはもう……森野さんの唇が俺の頬に触れていた。
 俺はもう……気が動転しちゃって全く動くことが出来ない。
 森野さんは固まった状態の俺にはにかんだ笑顔を見せると、素早くR'xの中へと入っていってしまった。
――周囲からの視線が固まった身体に容赦なく注がれているのを、その場の雰囲気だけで痛いくらいに感じ取ることが出来た。

 その後、森野さんを残して、俺たちは各々帰宅することに。
 森野さんは、bonheurメンバーで今後のことについて話し合うらしい。
 何はともあれ、無事ライブも成功したし、ホントに良かった!
 『めでたしめでたし』ってやつだ。
 でも、その喜びもつかの間、俺にはまた新たな苦悩が舞い降りてくることに……。

 帰宅してすぐ、俺はノートパソコンを開いてインターネットに接続していた。
 折角だから、これを機会にbonheurのホームページをチェックしておこうと思ったんだ。
 ただ、俺はホームページのアドレスを知らない。
 上策として、検索エンジンで『bonheur』を検索することに。
 すると、実に六千件近くのページがヒットしてしまった。
 さすがにこれじゃあ探すのが厄介だから、更に『インディーズ』というキーワードを追加することに。
 ヒット数が二百件くらいに落ち着き、俺はその中から探し出す。
 ……と、探しているうちに奇妙な文字列を発見した。

『bonheurのボーカル「MANA」がライブに登場! しかも彼氏も一緒!?』

(……なんだこりゃ?)
 妙に気になって、そのページを開いてみる。
 そのページは掲示板みたいで、ユーザーが立てた記事に他のユーザー達が返信するタイプのもの。
 掲示板の記事の一つのタイトルがそれだった。
 とりあえず記事内容をチェックしてみると……。
「……はぁ!?」
 ……思わずうなってしまった。
 そこにはデジカメで撮ったと思われる写真と一緒にメッセージが書き込まれていたんだけど……その写真に写っていたのは紛れも無く森野さんと…俺。
 しかも、ちょうど森野さんに抱きつかれたシーンだ。
「……………」
 ……かなりの不安を感じながら、返信内容の方も確認し始める。
 すると、案の定……。

『MANA可愛かった〜! …でもあの男、マジで誰?』
『ホントホント、しかもあんなにベッタリくっついちゃって…マジでカレシだったりして』
『やめてくれ〜! ……誰かあの男の詳細知ってる人情報ヨロ』
『同感。…出来れば画像も↑してほしい。……印刷したいし。……ガビョウ用意しとこw』


 ……お、俺が何したっつ〜んだよ〜!!


 ===あとがき=====

 第8話で〜っす♪
 何とか書き終えました〜。
 何だかんだで結構長めになってしまいましたね(汗)

 さて、今回で森野 愛 編は終了です。
 森野さんの変化の過程…については詳しく書きませんでしたが、あなたの想像で感じ取ってくれると嬉しいです。
 あと、曲の歌詞も載せることが出来ました〜。
 一応、私なりに考えて創った歌詞です。
 け、けしてテキトーに書いたわけじゃないですよ(汗)
 ホントは曲そのものもMIDIとかで創れればいいんですけど……私にはそこまでの実力はないので勘弁してください(滝汗)

 えっと……次話は誰の話にしようかな〜。
 う〜ん……一応、今のところは『藤谷 日奈子 編』が有力です。
 まぁ、あくまで『今のところ』ですけどね(汗)

 2004/03/13 1:50
 久しぶりの運動で(ビリヤード&卓球)寝て起きたら筋肉痛は必至? …な、状態にて(汗)



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