第2章〜思想の妖精”シンクル”〜(上)


「村が・・・村が燃えてる・・・・・」

「私達の・・・村が・・・・・」

エリアはただ呆然と村が燃える光景を眺めていた。

「エリア!しっかりしてよ!早く村に行かないと!!みんなが危ないよ!!」

僕はとっさにエリアの手をつかんで村へと急いだ。

みんなは無事だろうか?

ちゃんと避難できているだろうか?

それ以前に何で村が燃えているんだろう?

とにかく急がなければ!!

あせる気持ちを押さえて、僕達はラダの村へ向かう。

もちろんセレスも。

セレスはその姿を他の人に見られるとまずいから、僕のリュックの中にいる。

セレスも窮屈で大変だとは思うけど、今はそんなことを考えている余裕は無かった。

ただひたすら走っていた。



僕達は確実にラダの村に近づいていた。

しかしラダの村はその姿を鮮明に見せるどころか、より原型をとどめない姿になっていった。

家は燃え崩れ、ラダの特産物ラダコーンの畑はもう焼き尽きていた。

「くそっ!」

僕は半分やけになってラダの村へと全速力で走っていった。

「・・・・・・・・・・!」

エリアが何か言っているようだったけど僕の耳には届かなかった。



僕はラダの村のすぐ近くまでついた。

でもこれ以上進むことができなかった。

高らかに炎上している炎が僕の行く手をさえぎっているんだ。

「誰かいませんか!!」

僕は叫んだ。

ラダの村に向けて。

「だれかいるのか!?」

ラダの村から声が聞こえた!

僕は夢中になってその声に答えた。

「村の入り口にいます!大丈夫ですか!?」

「その声は・・・セイルか!?」

どうやら村にいる人は僕のことを知っているらしい。

そして僕も。

「もしかして・・・エリットさん!?」

僕もその声の主を知っていた。

エリットさんは、ラダの村で道具屋を営んでいるおじさんだ。

エリットさんは僕のほうに慌てて近づいてきた。

「セイル!いったい何処に行ってたんだ!?」

「あ、あの・・・クレット山の洞窟に・・・・・ってそんなことよりいったい何がどうなっちゃったの!?」

「突然魔物を連れた女が現れて、その魔物が村に火を放ったんだ!!女と魔物は村中に火がまわったのを確認して消えちまった!!」

「村のみんなは大丈夫なの!?」

「あぁ、村のみんなはエルフィンに避難した!みんな無事なはずだ!!」

「・・・でもその女は何故こんなことを?」

「わからねぇ、ただやつは消える直前にこんなことを言っていた」

『勇気の妖精!どうやら封印は新しい勇精者によって解かれたみたいだけど、こうなるところが増えてほしくなければ素直に我が主のところまで来なさい!さもないとここと同じ様になる場所が増えるわよ!!』

「・・・エリットさん、頼むからその女の人の声まで真似しないで・・・気持ち悪いから」

「・・・わるい、ただあの女は人じゃないぜ」

「人じゃない?」

「あぁ、あの女はダークエルフだ」

「ダークエルフ?」

「そうだ。耳が長くて、肌は黒い。まずダークエルフと考えて間違い無いだろう。ダークエルフはエルフと同様に魔法が得意だ。だから突然現れたり、消えたりできたんだろう」

「・・・・・・・・・・」

「とにかくお前も早く逃げろ!・・・・・エリアはどうした!?」

「えっ?」

エリアは僕の後ろにはいなかった。

・・・けどだんだん姿が見えてきた。

どうやらエリアは僕の走りに追いつけなくなっていたみたいだ。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・速すぎるよセイル!」

「ごめん、ごめん」

「まったく、途中で『ちょっと待って』って言ったのに!」

「そんなことはどうでもいいから早く2人とも逃げろ!炎に巻きこまれたら終わりだぞ!!」

「エリットさんは!?」

「俺はもう一度村に残っている人がいないかどうか確認してから行く!!」

「・・・わかりました!エリア!行こう!!」

「えっ、ちょっと!また走るの!?」

「そうだよ!もう少し頑張ってよ!!」

僕達はエルフィンへと向かった。



エルフィンへの道中。

僕はエリアのペースに合わせながら道を急ぐ。

「ごめんなさい」

突然後ろからセレスの声が聞こえた。

リュックの中から声を出しているんだ。

「えっ、何で謝るの?」

「私のせいで・・・私のせいであの村は炎の海と化してしまったんです。私があなたに助けを求めたりしなければあの村は・・・・・」

「・・・違うよ」

「えっ?」

「それは違うよ、セレス。ラダの村が燃えちゃったのはセレスのせいじゃないよ!やったのはエリットさんが言ってたダークエルフと魔物なんだから!それにセレスがそのダークエルフのもとに行っちゃったらどの道世界は『世界を脅かすもの』によって消滅させられちゃうんでしょ!!だからラダの村が燃えちゃったのはしかたないよ。けしてセレスのせいなんかじゃないよ!!」

「・・・ありがとう。あなたはやさしいのね」

「・・・ねぇセレス?僕達のことを『あなた』って呼ぶんじゃなくて名前で呼んでよ。せっかくお友達になれたんだし。ねぇ、エリア!」

「そうよ!なんか『あなた』じゃこっちもなんか変な気分になるし」

「お友達・・・か」

「ん?」

「それじゃあこれからよろしくね!セイル!エリア!」

僕とエリアはセレスと『お友達』になった・・・・・



僕達は急ぐ。

エルフィンへと。

ラダからエルフィンまでは歩いて6時間くらいかかる。

いったい走ってどれくらいでつくだろうか?

とにかく急がないと!

何のために?

もちろんエルフィンを守るために。

ダークエルフが言っていたことが確かなら、次に狙ってくるのはエルフィンだ。

なぜならエルフィンにはフェアリーストーンがあるから。

フェアリーストーンが『世界を脅かすもの』のてに渡ってしまえばこの世界は消滅。

それだけは絶対に阻止しなければならない。

そして、フェアリーストーンがなければやつらはまたラダの村のようにエルフィンを焼き尽くすだろう。

エルフィンに住んでいる人達はもちろん、ラダから逃げてきた人達も危ない状態になってしまう。

それも阻止しなければならない。

そのためには早くエルフィンに着いてエルフィン城へ行って、王様に事実を伝えないと!

ラダの村のような光景はもう絶対に見たくない!

「エリア、もう少し急げる?」

「う、うん。なんとか」

「じゃあもう少し急ぐよ!」

僕達がエルフィンへの道を急ごうとしたその時!

「グォォォ!!」

「な、なんだ!?」

「あ、あれ!」

エリアがエルフィンへの道の先を指差したから見てみると、前から猪みたいなものが突進してきた。

大きさも普通の猪と同じくらいだ。

僕達は突進してきた猪みたいなものを何とか避けた。

猪みたいなのはそのまま後ろに突っ込んでいった。

「なんなんだ!?あの猪みたいなの!!」

「レイジボアよ!」

「レイジボア?」

「・・・ほんとセイルって読者にやさしい性格ね!」

「???」

「レイジボアっていうのは、瘴気などの外的邪気によって魔物化した猪のことよ!普通の猪より筋力が以上に増し、その性格も獰猛になる。そして目の色に生気が無くて、破壊衝動だけで行動する」

「・・・とにかくあいつは魔物だってわけだね!」

そう言って僕は持っていたダガーを構えた。

「そういうことよ!」

エリアもロッドを構え、呪文の詠唱に備えた。

レイジボアは再び進行方向を僕達に向け、突進を始めた。

それと同時に僕もレイジボアに突っ込む。

エリアは呪文の詠唱を始める。

レイジボアの突進は一直線、かわすことは割合簡単だ。

そしてそのかわした瞬間がねらい目だ。

僕はレイジボアの突進をギリギリでかわし、それと同時に切りつける。

僕の攻撃は見事に命中、レイジボアの動きは急激に鈍くなった。

その時エリアの呪文も完成する。

「燃え上がる炎よ!無数の弾となり敵を撃て!ファイアショット!!」

エリアのファイアショットは動きが鈍ったレイジボアに見事に命中した。

「グアァァァァ!!!!」

レイジボアは苦痛の叫びをあげ、その場に倒れこんだ。

僕達の勝利だ!

「ふぅ、なんとかなったわね」

「そうだね、突然だからちょっとびっくりしたけど」

「さて、じゃあエルフィンまで急ぎましょ!」

再び僕達がエルフィンへの道を進もうとしたその時・・・

「グオォォォォ!!!!」

「えっ!・・・まさか・・・・・!!」

そのまさかだった。

またレイジボアが現れたんだ!

しかも今度のはさっきのレイジボアの2倍くらい大きい。

巨大レイジボアはさっきのレイジボアと同じ様に突っ込んでくる。

「くそっ!」

僕はさっきと同じ様にギリギリでかわして、巨大レイジボアの側部をダガーで切りつけた。

しかし・・・

「グルルルル!!!」

巨大レイジボアに苦痛の叫びは無かった。

それどころかますます怒りに満ちた形相になっていた。

エリアも再びファイアショットで巨大レイジボアを攻撃する。

しかし巨大レイジボアにダメージは無く、ただ体毛がちょっと焦げただけだった。

「何で効かないのよ〜!!」

エリアは苛立ちを含んだ叫びをあげた。

巨大レイジボアはその叫びに反応してエリアに向かって突進してきた。

「えっ!」

エリアは突然のことで反応が遅れている!

「エリア!!」

僕はエリアに向かって走る。

でも・・・

「くっ!間に合わない!!」

「いやっ!こないでっ!!」

「セイル!」

急にリュックから声が聞こえた。

「セレス?」

「セイル!私が言うように念じて!!」

「念じる?」

「説明は後!時間が無いわ!!」

「・・・わかった!で、どうすればいいの!?」

「まずエリアのことを助けたいと念じて!」

「うん!」

「そしてエリアを守りたいと念じて!」

「うん!」

「そして最後にエリアを包み込むように念じて!」

「わかった!エリア・・・僕が絶対に守る!!」

僕は念じた。

エリアを・・・エリアを守るために。

するとエリアの周りにうっすらと緑色に見えるほぼ透明な膜みたいなものができて、レイジボアの突進を妨げた。

レイジボアはまるで壁にでもぶつかったかのように膜の前で急に止まり、そしてその場に倒れた。

レイジボアが倒れた後、その膜は消えてなくなった。

「これ・・・魔法?」

僕はすごくびっくりした。

だって僕は魔法使いじゃないから魔法を使えるわけ無いのに。

「セイル、これは魔法ではないわ」

またリュックから声が聞こえる。

セレスがリュックから顔を出して僕に話しかけているんだ。

「えっ、魔法じゃないの?」

「そうよ、これは精晶術というものよ」

「精晶術?」

「そう、精晶術っていうのは同精神の司者と精者がそろって初めて使うことができる術よ。つまりさっき使った精晶術は勇気の精晶術に分類されるの」

「精晶術を使うときって何か消耗したりしないの?」

「消耗するわ、魔法と同じく精神力を」

「えっ!でも僕は魔法使いじゃないから精神力は無いはずだよ!?」

「精神力を消耗するのは私達司者のほうなのよ、だから精者の人が精神力を持っていなくても精晶術を使うことはできるわ」

「じゃあ精者の人は何にも消耗しないで済むの?」

「いいえ、精者の人も共鳴力という力を消耗するの」

「共鳴力?」

「共鳴力っていうのは司者と精者の力を繋ぐ力、この力が発揮されない限り精晶術を使うことはできないわ。さっき念じてもらったのはこの共鳴力を発揮するためよ」

「へぇ〜!ねぇ、さっき使った勇気の精晶術はなんていう精晶術なの?」

「さっき使ったのは『エナジーコート』っていう勇気の精晶術よ」

「ふ〜ん・・・・・あっ!そういえばエリア大丈夫!?」

「う、うん。大丈夫」

エリアは倒れたまま動かない巨大レイジボアを見ながら答えた。

「よかった」

本当に良かった!エリアが無事で!!

僕は心からそう思った。

それにしても・・・

「それにしても何でこんなところに魔物が?いくら魔物でもそう簡単に人間の前には出てこないはずなのに」

「きっと『世界を脅かすもの』の封印が薄れてきたのと同じに、この世界の邪気が強まったのでしょう」

セレスの声はその深刻さを克明にあらわしていた。

「・・・とにかく急ごうよ!ここで止まっていたってしかたないし!!」

「・・・そうね!」

「急ぎましょう!」

全員の意見が一致し、僕達は再びエルフィンへと足取りを進める。



どれくらい進んだだろうか。

エルフィンまでの道はとにかく下り坂ばっかり。

そりゃ山を下ってるんだから当たり前だけど。

道は一本道で分岐点が無い。

道を間違える心配は無いけど、ずっと同じ景色ばっかりだからなんかあまり進んだ気がしない。

徐々に太陽の日差しも厳しくなってきた。

身体のあらゆる場所から汗が滴り落ち、その体感気温をより高くしていた。

「セイル・・・まだつかないの?」

さすがにエリアもばててきたらしい。

「もうちょっと頑張ってよ、もう少しだから」

「そんな事いったってもう足が・・・」

エリアはそう言いながらその場にしゃがみこんでしまった。

「・・・もう、しょうがないなぁ」

僕はエリアの前まで行くと、背負っていたリュックを下ろしその場にしゃがみこむ。

人をおぶるときの体制だ。

「ほら、乗って!」

「えっ!・・・でも・・・・・」

「もう走れないんでしょ、恥ずかしがらないでいいよ」

「そ、そんなんじゃないわよ!そんなんじゃなくて・・・えっと・・・そう!セイルは私より小さいから私をおぶるの大変なんじゃないかな〜って思って」

「・・・ふ〜ん」

「な、なによ!」

「べ〜つに〜♪別に身長は関係無いよ、おぶるのには。それより体重の方が問題だよ・・・もしかしてエリア・・・重い?」

「そ、そんなことないわ!わかったわよ!じゃあおぶってもらうわよ!!」

「はいはい、ぜひおぶらせてください」

エリアはしぶしぶ僕の背中に乗った。

「あっ、僕のリュック持ってね!」

「は〜い!!」

エリアはリュックを2つ背負った。

エリアのと僕の。

その分の重さも背中に感じ、重く感じた。

エリアは・・・違う意味で重かった・・・・・



僕はエリアと2つのリュックを背負って走る。

最初は慣れてなかったせいか僕の足取りは不安定だったけど、次第に慣れてきて今は快調に走っていた。

「ねぇセイル?」

「な・・・に?」

僕は走りながら答える。

「なんか昔と逆だね」

「えっ?」

僕はエリアが何の事を話しているのかわからなかった。

「昔は・・・昔は私がセイルをおぶってよくラダの村の中を走ってたじゃない」

「・・・うん・・・・・そうだね」

「セイルは変わったね・・・昔はあんなにひ弱だったのに・・・・・」

「エリアも変わったじゃん」

「私は・・・変わってないわよ・・・昔と同じ・・・弱い女の子・・・・・」

「・・・・・どこが!?」

「・・・なんか言った!?」

「ひえ〜!!」

僕の足取りは自然と速くなっていった。



しばらくするとお城と城下町がうっすらと見えてきた。

エルフィンだ。

「エリア!見て!もう少しだよ!!」

「・・・・・・・・・・」

「エリア!聞いてる!?」

「スー、スー、スー」

・・・エリアは寝ていた、気持ちよさそうに寝息を立てて。

エリアの寝息がちょうど僕の耳のそばで立てられる。

なんかくすくったいようで、きもちわるいようで、きもちいいようで、うれしいようで、うれしくないようだ。

なんか意味がわからないような言い方だけど、本当にそうなんだ。

けして不快感だけが残る寝息ではなかった。

僕はエリアを起こさずにエルフィンへの残りわずかな道を走らずに歩く。

ゆっくりしていちゃいけないのはわかってる。

でも・・・もう少しこうしていたかったんだ。

もう少しだけ・・・このままで・・・・・

「ふぁ〜!!」

・・・僕の願いはもろくも崩れ去った。

エリアが大あくびをしながら起きたんだ。

「ん?ここどこれすか?」

・・・まだ寝ぼけているみたい。

「エリア、もう少しでエルフィンにつくよ!」

「ふぇ?えるふぃん?」

・・・・・だめだこりゃ。

僕はエリアに現状を説明するのをあきらめ、エルフィンへと向かった。



僕達はついにエルフィンの入り口までついた。

エルフィンの街は大きな壁に囲まれていて、この入り口からじゃないと中には入れないようになっている。

入り口には入街受付があって、その受付で手続きを済ませないと街の中に入ることはできない。

それだけこのエルフィンは、フィンの国にとって重要な場所なんだ。

僕はエルフィンの入り口の前でエリアを降ろした。

そしてエリアから僕のリュックを受け取る。

「ここにフェアリーストーンがあるはずだよ」

僕は小声でリュックの中のセレスに言った。

「・・・ここにはいません」

「えっ?」

あまりに簡単に否定されてしまったので僕は露骨に大きな声を出してしまった。

入り口の前にいる人達の視線が痛い。

僕はまた小声でセレスに質問する。

「ここにはいないってどういうこと?このエルフィンのお城にいるクレスト王子がフェアリーストーンを持っているんだからここにいないって事は無いんじゃないの?」

「・・・でも間違い無くいません。私達司者は近距離にいると司者同志でその存在を確認することができるんです。しかしここからは他の司者の存在を感じられない」

「う〜ん、じゃあいったいどこに・・・」

「ねぇ、とりあえずせっかくエルフィンの入り口まで来たんだから街の中に入ってみようよ!」

エリアがそう言ったので、僕達は情報収集を兼ねエルフィンの街に入ることにした。

僕達は受け付けで入街手続きを済ませた。

エルフィンの街の中はとっても綺麗だ。

家はレンガで造られた家で、街の中央には大きな噴水がある。

いたるところに小さな公園があって、花壇には花が満開だ。

らだの村とは違って都会って感じがした。

僕達は受付で聞いておいたラダの村のみんながいる場所へ向かった。



村のみんながいるという家に着いた。

僕は入り口のドアを開ける。

そこには・・・みんながいた!

エリットさん以外のみんなが。

「セイル!それにエリアも!!」

いつもお世話になっているラーデさんが僕達に話しかけてきた。

ラーデさんはもと冒険家で、村で僕に短剣の扱い方を教えてくれていた。

それだけじゃなくていろんな場所での行動の仕方とか、いろいろな道具の使い方とかも教えてくれていたと〜ってもお世話になった人だ。

「ラーデさん!無事でよかった!!」

「それはこっちの台詞だ!お前ら本当に何処に行ってたんだ!?」

「・・・クレット山の洞窟に」

「・・・・・そんなこったろうと思ったよ。セイル、探検家になりたいのはわかるけどほどほどにしろよな!」

「・・・・・はい」

「エリアもだぞ!」

「・・・・・はい」

「・・・まぁとにかく2人とも無事でよかった!ラダの村からここまで来たんだ、疲れているだろう。とりあえずゆっくり休め!」

「はい!」

「は〜い!!」

僕とエリアは喜びに満ちた変事をした。

そりゃ喜ぶよ、あんなに疲れたんだから。エリアはともかく僕は途中からエリアをおぶってずっと走ってきたんだから。

とにかく疲れて眠い。

それにしてもこの家一つにラダの村のみんなが入っているから狭い。

僕はこの部屋の中で自分の居場所をなんとか確保すると、すぐに睡眠モードに入った。

エリアも自分の場所を見つけて寝てるみたいだ。

また寝るのかエリアは・・・・・

そんなことを思っているうちに僕は夢の世界に入っていった。



僕は夕方に起きた。

周りを見まわす。

人の入りはまばらだ。

ただその中にエリットさんもいた。

どうやら無事ラダの村から戻ってこれたらしい。

村のみんなは家の外に出たり入ったりしていた。

外から中に入ってくる人は何かを持っている。

銀色のトレーにのった食べ物だ。

どうやら食事の支給があるみたいだ。

「ぐぅ」

・・・食事のことを考えていたらお腹がすいてきた。

僕はエリアを誘って食事を取りに行くことにした。

「ねぇエリア!起きて!!」

「・・・・・・・・・・」

「エリア!起きてよ!!」

「うぅ・・・・・」

「エリア!!」

「・・・もうちょっと・・・・・」

「エリア!!」

「・・・ん?・・・セイル?・・・おはよ〜」

「・・・エリア、今はもう夕暮れ時だよ」

「ゆ〜ぐれ?」

「そお!夕暮れ!!」

「・・・で、なにかよ〜?」

「・・・はぁ、あのね、今外で食事の支給をしているみたいなんだけど一緒に行かない?」

「・・・うん、いく〜♪」

・・・・・大丈夫かなぁ?

とにかく僕とエリアは食事をもらいに外に出た。

外には簡易テントがあって、そのテントに『ラダの村の方々はこちら』と書いてある。

どうやら支給場所はあそこらしい。

僕達は、その支給場所で食事をもらうとみんながいる家に帰ろうとした。

その時、辺りを歩いていた通行人2人組の話声が聞こえた。

「なぁ、クレスト王子が失踪したっていう噂って本当なのか?」

「あぁ、そうらしいぞ!ただ失踪じゃなくて王子自ら城の外へ出たらしいぞ!」

「本当か!?・・・いったい何処へいったんだ?」

「何でもここから南にある『フィンセルの森』の中に入っていったらしいぞ!」

「フィンセルの森だって!あそこは凶悪な魔物が出るっていう話じゃないか!そんなところになんで!?」

「そんなのわからねぇよ!・・・まぁ噂だしな!」

2人組はそのまま僕達の前を通りすぎていってしまった。

「・・・・・聞いた!エリア!?」

「ほぇ?なにを〜?」

「・・・・・ごめん、なんでもない」

エリアはまだ寝ぼけていた。

とにかく僕達は家へと戻った。



家へ戻って食事をとった僕とエリアは、他のみんなが寝静まるのを待ってその後にリュックの中のセレスに話しかけた。

「セレス、起きてる?」

「・・・はい、起きてますよ。何かあったんですか?」

「もしかしたらフェアリーストーンの場所がわかったかもしれないんだ」

「本当ですか」

「うん。ここから南に行くとフィンセルの森っていうところがあるんだけど、そこにフェアリーストーンを持っているクレスト王子が1人で向かったらしいんだ」

「1人で・・・ですか?」

「そう・・・みたい」

「・・・ちょっとそのクレスト王子っていう人が心配ですね」

「えっ?」

「下手をしたら誰かに操られているのかもしれません。もしそうなるとそのクレスト王子だけじゃなくてフェアリーストーンも危ないです」

「どうする?これからフィンセルの森に行ってみる?」

エリアは随分と無茶なことをさらっと言ってのけた。

「えっ!これから行くって僕達だけで!?」

「シー!!静かにして」

「ご、ごめん。でも・・・本気?」

「だって、このままじゃ危ないんでしょ、だったら行くしか無いじゃない」

「・・・行きましょう」

・・・セレスまでエリアの意見に賛成した。

僕の意見は通りそうに無い。

僕はあきらめて・・・

「じゃあ・・・行こうか」

僕達が、あの凶悪な魔物が出るというフィンセルの森へ行くことが決まった。

僕達はみんなを起こさないように家の外に出る。

抜き足、差し足、忍び足・・・・・

家の外に出ることは成功した。

「さて、なんとかしてクレスト王子と紅赤色に光るっていうフェアリーストーンを救い出さなきゃね!」

エリアは何故か楽しげに言う。

その時セレスが急に話し出した。

「クレスト王子という人が持っているフェアリーストーンは紅赤色に光るんですか!?」

「う、うん。そうよ、言ってなかった?」

「・・・シンクル」

「えっ?」

「そのフェアリーストーンは思想の妖精シンクルが封印された姿です!」

「思想の妖精・・・っていうことはクレスト王子は!?」

僕は質問地味た言葉をセレスに向けて話した。

「はい・・・思想の精者、想精者である可能性が高いでしょう」

クレスト王子が・・・想精者・・・・・



To Be Continued

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